国際交流・留学 International exchange and study abroad

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卒業生の留学体験記 (フランス・ボルドーモンテーニュ大学大学院)

フランスの大学院修士課程を修了した卒業生から留学体験記が寄せられましたので、ご紹介します。

畑中 直人さん
2019年3月国際学部 国際学科卒業  
2019年9月~2021年12月 フランス ボルドーモンテーニュ大学修士課程所属、修了
(コロナ感染症の影響により修了時期が通常より3か月程度延長。)
なお、畑中さんは在学中に日本学生支援機構(JASSO)の海外留学支援制度(大学院学位取得型)に応募、採択され、本学からの本制度合格者1人目となりました。

大学院・研究科名
フランスのボルドーモンテーニュ大学のアフリカダイナミクスに関する学際的研究(Interdisciplinary Studies of African Dynamics)という修士課程に2年間所属しました。そこで農業、水の問題、地政学、人類学などの授業を受講し、アフリカの開発の現状と課題について多角的に学びました。また開発案件の立案時に行う問題分析、実施時に行う評価・分析方法等を、実際に開発の分野で用いられるツール(ロジカルフレームワーク)を使って学習しました。ほとんどの授業は仏語で実施されましたが、中には英語で実施されたものもありました。1科目につきディスカッションなどを交えながら120-180分の講義があり、課題はエッセイを提出することが多かったです。
 ≪大学の事務局本部≫

 ≪クラスメートとの1枚≫

生活の様子
ボルドーは、都市がユネスコの世界文化遺産に2007年に登録されるほど、景観が美しい街で、歴史的建築物がたくさんあります。またガロンヌ川という河川が近くを流れており、その川岸は散歩したり、ピクニックしたりするのに人気なスポットです。私も時間のある時は街や川岸辺りを散策したり、博物館に行ったりしました。アジアスーパーや日本食のレストラン(お寿司はフランス全体で人気)もあるので、日本食が恋しくなることはあまりありませんでした。しかし外食は日本と比べて高いので、自炊することが多く、外食はたまの楽しみ程度で行きました。その代わりに、バーやカフェに友達と行ったり、友達の家でホームパーティーをしたりして親交を深めました。
≪ボルドー中心部の様子≫

 ≪クラスメートとのピクニック≫

インターンの経験
私の所属する修士課程では、修士2年目に3ヶ月以上のインターンをすることが必須なので、フランスの開発系NGOであるCCFD-Terre solidaire(旧Catholic Committee against Hunger and for Development)という団体で約4ヶ月間研究インターンシップを行いました。1961年に設立された、フランス初の開発系NGOで、飢餓防止や農業などに関するミッションを約70ヵ国で行っている国際的な団体です。コロナ禍ということもあり就業形態はテレワークで、週35時間働きました。私はアフリカ部に所属し、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国が位置する大湖地域のミッション・マネージャーの手伝いをしました。大湖地域の国別プロフィール資料を作成し、その国の社会経済の開発度合いについて現状分析を行い、その国が抱えている問題や今後の課題についてまとめました。そしてコンゴ民主共和国東部の土地をめぐる紛争の研究レポートを作成しました。1990年代から長期化している東部紛争には、土地の問題が大きく関わっています。レポートでは土地、権力、アイデンティティーの3つのキーワードをもとに、土地利用や権利の問題など土地紛争が長期化している政治的、社会的な要因を探求しました。また、土地問題に関し、現地や専門家の人の意見を聞くために、現地NGOには仏語で、海外の研究者には英語でインタビューを実施しました。現地社会の変化や土地に関する伝統的リーダーの重要性等、文献調査では分かりづらい点を明らかにすることができました。この経験から、当事者の視点は開発援助立案の適切な現状把握においてなくてはならないものだと認識しました。

 ≪インターン先のスタッフ達と≫

研究内容・成果
修士論文では、研究インターンでの知見と経験を基に、コンゴ民主共和国東部の小農の土地の権利保障の問題と、市民社会の役割と戦略について執筆しました。論文のタイトルは、「Les enjeux de sécurisation foncière pour les petits exploitants agricoles à l’Est de République démocratique du Congo : rôles et stratégies de la société civile comme acteur de la transformation sociale(コンゴ民主共和国東部における小農の土地権利の問題:社会変革の担い手としての市民社会の役割と戦略)」です。この論文を通じて明らかになったことはコンゴ民主共和国東部の土地紛争の原因とその解決方法・アプローチです。民族アイデンティティーは土地紛争の激化の原因になりうるが、土地紛争と民族紛争を直接的に結びつけるのは間違いで、より広い視野で紛争の原因を考察する必要があることが分かりました。法的多元性という前提のもと、コミュニティごとの土地利用の規範や慣習、土地ガバナンスを担う機関の多様性を考慮しながら、民族の垣根を越えた参加的かつ地方分権的なガバナンスを実施する必要があるとの結論に至りました。その実現には、現地の市民社会のプラグマティズムなアプローチと、現地の実情についての分析を継続的に行い、その分析結果を全てのステークホルダーと共有する必要性が明らかになりました。本論文は、地域住民のニーズに直接裨益する支援の方法を考察する大変良い機会になりました。

修士課程を終えて
コロナ禍の留学ということで、留学前では想像していなかった事態も多々ありました。大学院が企画するスタディツアーの中止や、オンライン授業への切り替え・一部授業の中止など、様々な苦労や我慢が絶えませんでした。また現地の学生に交じり授業を受けたり、課題をしたりとするのも簡単ではありませんでした。特に苦労したのは仏語で80ページ以上書く必要があった修士論文の執筆です。こんな長文を書くのは人生初だったので、書けるのか心配でした。しかしながら、インターン先の元上司や卒論のチューターに、卒論の構成に関する相談をしてフィードバックをいただいたり、フランス人の友達に仏語の添削をお願いしたりしたことで、無事に提出できました。悩んだ時は一人で抱え込み過ぎず周りの人に頼る大切さを学びました。インターンと論文執筆を通じて、学部時代から興味関心を持っていた大湖地域の研究を継続できたことは幸せでした。

将来の進路希望
NGO・NPO団体への就職を志望しています。今回の仏系NGOでのインターンを通じて、草の根の国際協力に携わる就職したいという思いがさらに強まりました。大湖地域に対して、学術的な関心を継続的に持っているので、同地域で貧困問題や紛争解決の分野で活躍するNGO・NPOへ就職し、海外駐在員のポストに就くことを目指しています。特にアフリカの土地問題解決に関心があるため、長期的には同分野での活動実績があるInternational Land Coalitionといった団体への就職を目指しています。


お問い合わせ先

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