広島平和研究所

The Dragon’s Tail: Americans Face the Atomic Age

暴れ竜の尻尾―核時代を生きるアメリカ人

ロバート・ジェイコブズ/著(マサチューセッツ大学出版、2010年)

 


 本書は、冷戦期前半のアメリカでの核兵器にまつわる議論に焦点を置き、核兵器が世界の終焉、あるいは平和で豊かな未来の終焉を暗示するものとして見られていた「核兵器魔力説」を、掘り下げて分析している。核兵器や放射能、あるいは核戦争を生き抜くことがアメリカ社会において真に意味するものは何かといった、さまざまな議論を分析しながら、「核兵器魔力説」がアメリカ人の核兵器のとらえ方に与えた影響を解明する。核兵器にまつわる議論は、核時代が始まったときからすでに空想に満ちたものであった。原子力は、底つくことのないエネルギー資源と豊かさの時代をもたらし、肉体労働ももはや不要となるだろう。戦争は過去のものとなる。自然界には突然変異による生き物がはびこる。あるいは、恐ろしい破滅と世界の終焉までをももたらし、原子爆弾の閃光が、人類がこの世で目にする最後のものとなるかもしれない──。先に見るものが暗黒郷か理想郷かにかかわらず、原子爆弾の登場は、想像可能な範囲におさまっていた過去と、予測不可能となった未来を分かつ、大きな分岐点をもたらした。私たちは今、大きく変容した世界、そして人類を変容させ得る世界に生きることとなったのだ。

 

 執筆にあたり分析した資料は幅広く、演説、民間防衛についてのパンフレット、宗教講和、B級映画、歌、イラストと多岐にわたる。本書はこれらの分析に基づき、核兵器による社会の変容と、それがアメリカ文化や社会にもたらした影響についての議論の核心に迫る。