広島平和研究所

連続市民講座(2017年度前期)

 

戦後処理をめぐる諸問題

 

 広島平和研究所では、2017年6月28日から7月26日まで合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ)において、下記のとおり2017年度前期の連続市民講座を開催しました。

 

    


 

■講座名 戦後処理をめぐる諸問題
【概要】

 戦争はいつ、どのように後始末がつけられるのでしょうか。この問いを、日本が最後に行った戦争に当てはめるとき、それは途方もない難題であることを、われわれは改めて思い知らされます。総力戦の果てに国家が解決しなければならなくなった課題は、講和・賠償、領土の返還交渉など多岐にわたります。また、課題は国家にのみ係るものでなく、従軍し、あるいは被害を受けた一般の国民にも及ぶものとなります。その意味で、戦後処理とは単に歴史的な問題でなく、現代の政治的課題であり続けている、といわざるを得ません。
 今回の連続市民講座では、平和研のスタッフを中心として、最新の研究成果を踏まえ、これらの問題に光を当てていきます。戦争被害受忍論と戦後補償制度、戦犯問題をめぐる日本の対応、日本と対比しうる事例としてのドイツの戦後処理のあり方、そして現在進行中の交渉である北方領土問題を含めた日ロ関係、といったテーマが論じられました。また、ゲスト講師としては、外交官として長年これらの問題に携わられ、またいまなお第一線の論客として活躍されている東郷和彦先生(京都産業大学世界問題研究所長)にご登壇いただきました。
 
■日時 6月28日~7月26日 毎週水曜日 全5回  (講義90分、質疑30分)
第1回:6月28日  午後4時~午後6時
第2回~第5回:7月5日、12日、19日、26日 午後6時~午後8時


■会場 広島市まちづくり市民交流プラザ (合人社ウェンディひと・まちプラザ)

北棟6階 マルチメディアスタジオ  広島市中区袋町6番36号 TEL 082-545-3911


■定員 100名 (申込多数の場合は抽選)

■各回の講義内容等

(1) 6月28日 水曜日  午後4時~午後6時

直野 章子 「戦争被害受忍論と戦後補償制度」

 「戦争という国の存亡をかけた非常事態のもとでは、国民は被害を等しく受忍しなければならない」とする「戦争被害受忍論」は、戦争被害に対する補償請求を却下する「法理」として、戦後たびたび援用されてきました。受忍論は日本国憲法下において形成された「法理」であるといえるのです。本講義では、受忍論がどのように形成されたのかを見たうえで、受忍論のロジックについて、戦後補償制度とのかかわりのなかで批判的に考察していきます。

 

(2) 7月5日 水曜日 午後6時~午後8時

東郷 和彦 「安倍外交は「戦後処理問題」を解決しつつあるか?」

  沖縄返還と日中正常化を終えた1972年以降、未解決の「戦後処理問題」は、ロシアとの平和条約の締結と北朝鮮との国交の回復でした。1989年の冷戦の終了のあと、村山談話(1995年)を基礎として中国・韓国との和解が進んだこともその思いを強めるものがありました。けれども世紀末からの20年、これらの問題の解決はむしろ遠のいているようにも見えます。本当にそうでしょうか?安倍外交は、戦後処理問題の解決に向かってどのように歩んできたかを、お話ししたいと思います。
 

(3) 7月12日 水曜日 午後6時~午後8時

永井 均 「勝者の裁き、敗者の裁き――第二次大戦後の戦犯問題をめぐる日本側対応」

 第二次大戦後、日本の戦争指導者が東京裁判で戦争責任を厳しく問われました。連合国11カ国が裁いたこの国際軍事裁判は、日本では一般に「勝者の裁き」として語られる傾向にあります。他方で、従来余り知られていないものの、終戦直後の一時期、日本側は「勝者の裁き」に相対する「敗者の裁き」の道を模索していました。本講義では、東京裁判の開廷直前に日本人が試みた戦犯問題への対応について、政府・軍当局の動向を中心に紹介し、その歴史的な意味を考えます。

 

(4) 7月19日 水曜日 午後6時~午後8時

竹本 真希子 「ニュルンベルク裁判と戦後ドイツ」

 ニュルンベルク裁判は東京裁判と並ぶ国際軍事裁判として知られていますが、単純に両者をひとくくりのものと見なすことはできません。本講義ではニュルンベルク裁判がどのようなものであったか振り返ったのち、東京裁判への影響や両裁判の共通点・相違点を解説します。そのうえで、ニュルンベルク裁判が戦後の東西ドイツでどのように受け止められたか、そしてその後の世界の平和に関する議論にどのような影響を与えたのかについて探ります。
 

(5)7月26日 水曜日 午後6時~午後8時

湯浅 剛 「日ロ関係の展開」

 昨年12月、ロシアのプーチン大統領は、安倍首相側からの熱心な働きかけにより訪日しました。しかし、日本国民にとって大きな関心事である北方領土問題について、ロシア側からの譲歩は一切ありませんでした。他方で、北方領土における「共同経済活動」に関する協議の開始など、一定の動きも見られます。「遠い隣国」であるロシアとの交渉の系譜をたどることで、これからの日ロ関係について考えるための題材を提供することが講義の狙いです。
 

■講師紹介

直野 章子 / 広島市立大学広島平和研究所・教授

 兵庫県西宮市出身。1994年に米アメリカン大を卒業後、95年、同大で広島市と原爆展を開催。96年、カリフォルニア大学大学院サンタクルーズ校に進学し、2002年に社会学博士号取得。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て05年から九州大学大学院比較社会文化研究院准教授を務めた後、16年10月、広島平和研究所に着任。主な著作に『原爆体験と戦後日本』、『「原爆の絵」と出会う』(共に岩波書店)、『被ばくと補償』(平凡社新書)、『ヒロシマ・アメリカ』(渓水社、第三回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞)など。

 

東郷 和彦 / 京都産業大学教授・世界問題研究所長           

 1945年、長野県生まれ。東京大学教養学科国際関係論卒業。2009年ライデン大学にて博士号(人文)取得。1968年外務省入省後、条約局長、欧亜局長、在オランダ大使などを経て、2002年外務省退官後はライデン大学講師、プリンストン大学東アジア研究学部講師、ソウル国立大学国際研究大学院客員教授等を歴任。2010年より現職。主な著書に『歴史と外交――靖国・アジア・東京裁判』(講談社、2008年)、『歴史認識を問い直す――靖国・慰安婦・領土問題』(角川書店、2013年)、『返還交渉――沖縄・北方領土の「光と影」』(PHP、2017年)、共編著に『歴史問題ハンドブック』(岩波書店、2015年)など。

 

永井 均 / 広島市立大学広島平和研究所・教授

 1965年、米国カリフォルニア州生まれ。立教大学大学院文学研究科博士課程後期課程満期退学。博士(文学)。専攻は日本近現代史。関東学院大学、女子栄養大学、共立女子大学などの非常勤講師を経て、2002年、広島平和研究所に着任。2016年より現職。単著に『フィリピンと対日戦犯裁判』(岩波書店、2010年)、『フィリピンBC級戦犯裁判』(講談社、2013年)、共著に『日記に読む近代日本』第5巻(吉川弘文館、2012年)、『平和を考えるための100冊+α』(法律文化社、2014年)、『フィリピンを知るための64章』(明石書店、2016年)などがある。

 

竹本 真希子 / 広島市立大学広島平和研究所・准教授

 1971年、茨城県生まれ。専修大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。ドイツ・オルデンブルク市カール・フォン・オシエツキー大学政治学博士。専修大学大学院社会知性開発研究センター・歴史学研究センター任期制助手を経て、2005年、広島平和研究所に助手として着任し、2008-2017年講師、本年4月より現職。専門はドイツ近現代史、平和運動・平和思想史。主な研究業績に『ドイツの平和主義と平和運動――ヴァイマル共和国期から1980年代まで』(法律文化社、2017年)など。

 

湯浅 剛 / 広島市立大学広島平和研究所・教授

 1968年、埼玉県生まれ。1992年上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。2001年上智大学大学院外国語学研究科国際関係論専攻博士後期課程満期修了退学。在デンマーク日本大使館専門調査員、防衛庁(2007年より防衛省)防衛研究所教官、防衛庁防衛局防衛政策課事務官・部員、北海道大学スラブ研究センター客員准教授などを経て、2015年より現職。専門分野はポスト・ソ連空間の地域機構、政治変動、安全保障。著書として『現代中央アジアの国際政治』(明石書店、2015年)、『平和構築へのアプローチ』(共編著、吉田書店、2013年)など。

 

(敬称略)