広島平和研究所

連続市民講座(2016年度後期)

戦争の非人道性を裁く

 

 広島平和研究所では、2016年10月12日から11月9日まで合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ)において、下記のとおり2016年度後期の連続市民講座を開催しました。

 

             

 

 


 

■講座名:戦争の非人道性を裁く
【概要】

 第2次世界大戦が終結してから70年が経過した今日においても、世界各地で様々な規模の武力紛争が生じており、その結果、無垢の一般市民が巻き込まれて死傷することも後を絶たないのが国際社会の実情です。その一方で、このような悲惨な状況が生じることを防止する観点から、国際人道法をはじめとする兵器および戦闘手段を規制することにより戦争被害を防ぐための制度や、戦争犯罪等を裁くための様々な国際刑事裁判の制度も徐々に構築されています。

 今回の講座では、戦争の非人道性を裁くという課題に焦点を絞り、国際政治学、国際法学の専門家らにより、①ジェノサイド条約起草過程にみる虚と実――「人道に対する罪」の裁きの限界、②国際刑事法の発展の歴史、③通常兵器における非人道性と国際人道法の限界、④国際刑事裁判所による戦争犯罪の処罰――核兵器使用について、⑤被爆体験の非人道性と戦争の非人道性の5つのテーマで、この課題を問う市民講座を企画いたしました。本講座を通じて、戦争による悲惨な状況の防止をめざし、不幸にしてそのような結果を発生させた場合は処罰の対象とするという、平和を希求する国際社会の課題について、ともに考えてみたいと思います。

■日時 10月12日、19日、26日、11月2日、9日 水曜日 全5回  18:30~20:30(講義90分、質疑30分)


■会場 広島市まちづくり市民交流プラザ (合人社ウェンディひと・まちプラザ)

北棟6階 マルチメディアスタジオ  広島市中区袋町6番36号 TEL 082-545-3911082-545-3911


■定員 100名 
 

■各回の講義内容等

(1) 10月12日 水曜日

吉川 元 「ジェノサイド条約起草過程にみる虚と実――『人道に対する罪』の裁きの限界」

ナチス・ドイツによる対ユダヤ人ジェノサイドの実態が明らかになると、国連は第1回総会においてジェノサイド禁止の法典化に取り組むことを決議しました。ジェノサイド禁止条約の審議における最大の争点は、禁止の対象とすべき集団に「政治集団」を含めるか否か、また禁止すべき範疇に「文化的ジェノサイド」を含めるか否かの問題でした。最終的に合意されたジェノサイド条約からは、なぜかこの2つの争点は葬り去られます。本講義では、連合国の本音を探ります。

 

(2) 10月19日 水曜日

福井 康人 「国際刑事法の発展の歴史」

本講義では戦間期に端を発する国際刑事裁判所の着想やその発展の歴史を、ニュルンベルグおよび極東国際軍事裁判所、旧ユーゴ―国際刑事裁判所(ICTY)、ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)、ならびに国際刑事裁判所(ICC)等を中心に辿ります。さらに、処罰の対象となる戦争犯罪、人道に対する罪、集団殺害犯罪、拷問、侵略犯罪およびテロ等国際犯罪についても触れ、戦争の非人道性を裁く法制度として、国際刑事法がどのように発展したか概観します。
 

(3) 10月26日 水曜日

小池 政行 「通常兵器における非人道性と国際人道法の限界」

核兵器はいうまでもなく、現代においてはナパーム弾、クラスター爆弾、劣化ウラン弾、対人地雷等、国際人道法の原則に反する、長く、不必要な苦痛を与え、かつ敵味方の別なく人間性を踏みにじる通常兵器に満ちています。実際に使用されているのはこれら通常兵器であり、これらに対して国際人道法が何をなしてきたのか、そしてなし得る限界を、赤十字の観点、実績も含め概説します。
 

(4) 11月2日 水曜日

真山 全 「国際刑事裁判所による戦争犯罪の処罰――核兵器使用について」

国際法は、戦争の方法や手段を詳細に定め、これを武力紛争法(国際人道法)と呼びます。この違反には、国の責任の他に将兵の刑事責任が問われるものもあり、これを戦争犯罪といいます。主に交戦国により処罰されますが、不処罰で放置されることもあります。このため、戦争犯罪その他の国際社会を脅かす犯罪の処罰を確保する国際刑事裁判所(ICC)が1998年に設置されました。本講義では核兵器使用が戦争犯罪であるとしても、ICCで核兵器使用が処罰可能かを見ます。
 

(5)11月9日 水曜日

水本 和実 「被爆体験の非人道性と戦争の非人道性」

広島では被爆体験の非人道性を問う活動が盛んですが、最終的に原爆が投下されるに至った、日本が起こした戦争の非人道性について考える機会は多くありません。戦争を起こしたから原爆を落とされて当然、という議論はもちろん論外ですが、被爆体験の非人道性も戦争の非人道性も等しく追及する姿勢が必要ではないでしょうか。講義では、アジア・太平洋戦争(1931年-1945年)の非人道性について、旧日本軍の化学兵器などの問題も視野に入れて考えます。

 

■講師紹介

吉川 元  / 広島市立大学広島平和研究所長・教授

 1951年、広島市生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、博士(法学)。広島修道大学法学部教授、ロンドン大学LSE国際関係研究センター研究員、神戸大学大学院法学研究科教授、上智大学教授を経て、2013年より現職。単著に『国際平和とは何か――人間の安全を脅かす平和秩序の逆説』(中央公論新社、2015年)、『民族自決の果てに――マイノリティをめぐる国際安全保障』(有信堂高文社、2009年)、『国際安全保障論――戦争と平和、そして人間の安全保障の軌跡』(有斐閣、2007年)、共編著に『グローバル・ガヴァナンス論』(法律文化社、2014年)など。

 

福井 康人  / 広島市立大学広島平和研究所准教授              

 1964年、兵庫県生まれ。2013年パリ第1大学法科大学院修了、博士(法学)。1987年外務省入省後、人権難民課、報道課、軍備管理軍縮課、不拡散科学原子力課、国際組織犯罪室、国際平和協力室、軍縮会議日本政府代表部、在ルーマニア日本大使館、南山大学外国語学部(客員教授)等で勤務。2015年3月、外務省を退職し、同年4月、広島市立大学広島平和研究所に赴任。主な著書に『軍縮国際法の強化』(信山社、2015年)。

 

小池 政行 / 日本赤十字看護大学教授

 1951年、東京都生まれ。フィンランド国立ヘルシンキ大学にて修士号取得(比較ヨーロッパ・国際法学)。外務省大臣官房海外広報課課長補佐、内閣総理補佐官付政策秘書官、日本赤十字社国際部参事を歴任。1999年より日本赤十字看護大学教授、2011年より青山学院大学法科大学院客員教授を務める。専門分野は国際人道法、国際関係論、赤十字国際活動論。著書に『医師のミッション―-非戦に生きる』(藤原書店、2012年)、『現代の戦争被害』(岩波書店、2004年)、『国際人道法――戦争にもルールがある』(朝日新聞出版、2002年)など。

 

真山 全 / 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授

 1957年、東京都生まれ。1987年京都大学大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学。甲南大学法学部助教授、防衛大学校国際関係学科教授を経て2008年から現職。その間、コロンビア大学法科大学院研究員(フルブライト奨学生)、国際刑事裁判所設立外交会議日本政府法律顧問、特定通常兵器使用禁止制限条約政府専門家会合日本政府法律顧問、国際人道事実調査委員会委員等をつとめる。専門分野は国際法。著作に(共編)『武力紛争の国際法』(東信堂、2004年)、「憲法的要請による集団的自衛権限定的行使の発現形態-外国領水掃海及び外国軍後方支援」(『国際問題』2016年1・2月合併号)など。

 

水本 和実 / 広島市立大学広島平和研究所副所長・教授

 1957年、広島市生まれ。1981年東京大学法学部卒業、同年朝日新聞社入社。1989年米国タフツ大学フレッチャー法律外交大学院修士課程修了(MALD 法律外交修士号取得)。朝日新聞社ロサンゼルス支局長、広島平和研究所准教授などを経て、2010年より現職。専門分野は国際政治・国際関係論(核軍縮)。著書に単著『核は廃絶できるか――核拡散10年の動向と論調』(法律文化社、2009年)、共著『核軍縮不拡散の法と政治』(信山社、2008年)、広島平和研究所編『21世紀の核軍縮――広島からの発信』(法律文化社、2002年)など。

 

(敬称略)