広島平和研究所

連続市民講座(2016年度前期)

核開発と国際社会

 

 広島平和研究所では、2016年6月3日から7月1日まで合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ)において、下記のとおり2016年度前期の連続市民講座を開催しました。

 

      

 


 

■講座名:核開発と国際社会

【概要】

 広島・長崎への原爆投下から70年が経過した今日においても、世界にはまだ1万5千発以上の核兵器が存在しており、国際社会による核兵器廃絶の様々な努力にもかかわらず、人類は依然として核の脅威にさらされているのが実情です。こうした中で、国際社会からの圧力にもかかわらず北朝鮮は本年1月に核実験を強行し、核弾頭及び弾道ミサイルの開発を継続しており、日本を含む北東アジアのみならず、世界の平和と安定に脅威となっています。更に、非国家主体が高濃縮ウラン・プルトニウム等核分裂性物質を不法に入手して核テロを行う可能性も依然としてあります。このような状況下で広島市立大学広島平和研究所では『なぜ核はなくならないのか II』という本の出版を予定しています。

 今回の講座では、同書の執筆に加わった広島平和研究所の研究員を中心に、①武器の進化と国際平和、②グローバルな核軍縮と日本の課題、③人道的アプローチの有用性、④北朝鮮の核開発と今後の課題、⑤イラン核合意の履行と中東地域の安定の5つのテーマで、この課題を問う市民講座を企画いたしました。本講座を通じて核兵器の廃絶について共に考えてみたいと思います。

 

■日時:6月3日、10日、17日、24日、7月1日(金曜日)全5回
18:30~20:30 (講義90分、質疑応答30分)

 

■会場:合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ) 北棟6階 マルチメディアスタジオ
広島市中区袋町6番36号

 

■定員:100名 

 

 

■各回の講義内容等

(1) 6/3(金)吉川 元「武器の進化と国際平和」
本講義の目的は、武器の進化に伴う戦争の機械化と国際平和秩序の変容との関連性について考察することにあります。まず戦争の機械化が進む過程を鉄道の軍事利用と機関銃の実用化を中心に考察します。ついで核兵器の開発によってもたらされた国際平和秩序の仕組みを明らかにし、最後に、軍産複合体が中心となって核開発及び通常兵器の拡散を進めていくことで国際関係が軍事化されていく過程を論じます。

 

(2) 6/10(金)水本 和実「グローバルな核軍縮と日本の課題」
国際社会は今、核兵器に関して、いくつかの課題に直面しています。大きく整理すれば、①北朝鮮など従来核兵器を持っていなかった国や、NPTに加盟せず核兵器を持っているインド、パキスタン、イスラエルの核兵器を放棄させること、②NPTで核兵器保有を認められている米ロ英仏中の核軍縮、③日本や豪州、NATOなど「核の傘」に依存する国家の核兵器依存を放棄させること、④国際的な市民社会が求めている核兵器廃絶や核兵器禁止条約制定を実現することです。これらの課題に被爆国日本がどう向き合うべきなのかを考えます。

 

(3) 6/17(金)福井 康人「人道的アプローチの有用性」
近年、核軍縮分野では大きな進展が見られない中で、いわゆる人道的イニシアティブに見られる人道的アプローチが注目されています。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みでの自律型致死兵器システム(LAWS)をめぐる議論もあり、対象が前者は核兵器、後者は通常兵器と異なるものの、ともに人道的側面から規範の形成が試みられています。最近のマーシャル諸島ICJ訴訟等の動きにもふれつつ、両者の相違点と共通点を明らかにすることを通じて、軍縮分野の規範形成における人道的アプローチの意義について考えます。

 

(4) 6/24(金)孫 賢鎮「北朝鮮の核開発と今後の課題」
北朝鮮は今年1月、4回目の核実験を行い、続いて長・短距離ミサイルを発射しました。北朝鮮の核能力・ミサイル技術の高度化は北東アジアの安全保障構造に不均衡と脅威を招いています。韓国国内では核武装の議論も行われ、朝鮮半島をめぐる日米中の勢力争いが激化しています。北朝鮮の核実験に対して、国連及び各国は非難決議案を出すなどの制裁措置を講じています。北朝鮮の核及びミサイル開発に対して、国際社会はどのような対応を取るべきかを考えます。

 

(5) 7/1(金)田中 浩一郎「イラン核合意の履行と中東地域の安定
イランの核合意は、交渉を通じて同国の核開発に長期的な歯止めをかけた点で多国間外交の成功例です。一方、核活動の縮小の引換えに経済制裁を緩和したことで、イランの国際社会への復帰を警戒する国もあり、皮肉にもイランをめぐる緊張は解消されないままです。特に中東における内戦の地域紛争への発展が懸念される中、石油や天然ガスの供給をこの地域に頼る日本にとり、他人事とは言えない状態が生じています。本講義では、中東地域の安定に向けた方途を探ります。

 

■講師紹介

吉川 元 キッカワ・ゲン / 広島市立大学広島平和研究所長・教授                               
  1951年、広島市生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、博士(法学)。広島修道大学法学部教授、ロンドン大学LSE国際関係研究センター研究員、神戸大学大学院法学研究科教授、上智大学教授を経て、2013年より現職。単著に『国際平和とは何か―人間の安全を脅かす平和秩序の逆説』(中央公論新社、2015年)、『民族自決の果てに――マイノリティをめぐる国際安全保障』(有信堂高文社、2009年)、『国際安全保障論――戦争と平和、そして人間の安全保障の軌跡』(有斐閣、2007年)、共編著に『グローバル・ガヴァナンス論』(法律文化社、2014年)などがある。


水本 和実 ミズモト・カズミ / 広島市立大学広島平和研究所副所長・教授

 1957年広島市生まれ。1981年東京大学法学部卒業、同年朝日新聞社入社。1989年米国タフツ大学フレッチャー法律外交大学院修士課程修了(MALD法律外交修士号取得)。朝日新聞社ロサンゼルス支局長、広島平和研究所准教授などを経て、2010年より現職。専門分野は国際政治・国際関係論(核軍縮)。著書に単著『核は廃絶できるか――核拡散10年の動向と論調』(法律文化社、2009年)、共著『核軍縮不拡散の法と政治』(信山社、2008年)、広島平和研究所編『21世紀の核軍縮――広島からの発信』(法律文化社、2002年)など。


福井 康人 フクイ・ヤスヒト / 広島市立大学広島平和研究所准教授                            
  1964年兵庫県生まれ。2013年パリ第1大学法科大学院修了、博士(法学)。1988年外務省入省後、人権難民課、報道課、軍備管理軍縮課、不拡散科学原子力課、国際組織犯罪室、国際平和協力室、軍縮会議日本政府代表部、在ルーマニア日本大使館、南山大学外国語学部(客員教授)等で勤務。2015年3月外務省を退職し、同年4月広島市立大学広島平和研究所に赴任。主な著書は『軍縮国際法の強化』(信山社、2015年)。


孫 賢鎮 ソン・ヒョンジン / 広島市立大学広島平和研究所准教授

 1971年韓国釜山市生まれ。2006年神戸大学大学院法学研究科修了、博士(公共関係法)。2006年~2011年、韓国統一部事務官(拉致問題、北朝鮮人権担当)、2011年~2013年、韓国法制研究院で研究員を経て2014年4月より現職。専門は国際法、北朝鮮法、主な研究業績に、「拉北者・国軍捕虜の問題の再考察」『停戦体制60年:国際法と国際政治』大韓国際法学会、2013年、pp.47-67、「北朝鮮の体制転換による北朝鮮住民の人権改善方案の研究――北朝鮮の政治犯収容所の清算問題を中心に」『統一研究院学術業書(II)』統一研究院、2013年、pp.269-320など。


田中 浩一郎 タナカ・コウイチロウ / 日本エネルギー経済研究所・中東研究センター長

 1961年東京都生まれ。東京外国語大学修士課程修了。日本エネルギー経済研究所常務理事。中東研究センター長を兼任。イラン及びアフガニスタンを中心に、中東諸国の政治動向に関する研究に従事して約30年。イラン、パキスタン、アフガニスタンでの在勤経験を持つ。メディアで中東情勢及び危機管理に関する解説を行うほか、海外での招待講演も多い。有識者として「在留邦人及び在外日本企業の保護の在り方等に関する有識者懇談会」(2013年)、「邦人殺害テロ事件の対応に関する検証委員会」(2015年)に参加。元国連政務官。