広島平和研究所

連続市民講座(2018年度)

 

「歴史としての戦後」を考える

 広島平和研究所では、2018年10月19日から11月16日まで合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ)において、下記のとおり2018年度の連続市民講座を開催します。
 下記の「申込方法」をご高覧の上、ぜひお申し込みください。

                           
        


 

■講座名 「歴史としての戦後」を考える

【概要】
   先の大戦が終わってから70年余りが過ぎました。日本では、この長き年月を「戦後」という言葉で表します。その傾向は「戦争と平和」を語る時に特に顕著です。他の国々では見られない独特の表現ともいえますが、それは、「戦後」という言葉が単なる時代区分ではなく、日本人の歴史認識やアイデンティティーと深く結びついているからでしょう。本講座では、様々な分野における具体的な事例の検討を通して、「戦後」の意味について考えます。
   第1回講義では、まず「戦後」がどのように語られ、捉えられてきたか、「戦後」をめぐる言説状況の見取り図を描きます。そのうえで、残り4回の講義を通して、具体的な事例をもとに考察を深めていきます。第2回では原爆体験の記憶と対米認識について論じ、第3回では日本との比較研究を念頭に、戦後西ドイツにおける「戦争」認識を紹介します。さらに第4回ではフィリピン・ルバング島の小野田元少尉など、残留日本兵の問題をめぐる日本人の戦争観を探り、最終回(第5回)では「戦後の象徴」としての憲法9条について検討します。
  「戦後」をめぐる諸断面を実証的に分析することを通して、「歴史としての戦後」を捉える新たな視座を提供できれば、と願っています。

■日時 10月19日、26日、11月2日、9日、16日 金曜日 全5回  18:00-19:30(講義60分、質疑応答30分)

■会場 広島市まちづくり市民交流プラザ (合人社ウェンディひと・まちプラザ)
               北棟6階 マルチメディアスタジオ
               広島市中区袋町6番36号 TEL 082-545-3911

■定員 100名 ※応募者多数の場合は抽選となります。

■受講料他 無料 ※高齢者いきいき活動ポイント事業対象の講座です。

■申込方法 10月10日(水)締切。
お電話でお申し込みください。Eメール・ファクスの場合は、件名を「連続市民講座受講希望」とし、氏名(ふりがな)・住所・電話番号を明記の上、下記へお送りください。
        ※受講可否の結果は、10月12日(金)頃に郵送予定です。
        ※受講可能な場合は、受講番号票を同封いたします。
        ※受講の際は、受講番号票をご提示ください。受講番号が確認できない場合、入場をお断りすることがありますので、ご了承ください。
      
■申込先 広島市立大学 広島平和研究所 事務室
〒731-3194 広島市安佐南区大塚東三丁目4番1号
電話 082-830-1811 ファクス082-830-1812
Eメール office-peace&m.hiroshima-cu.ac.jp
    ※メールを送信する際は、&を@に換えてください。


講義内容等

10/19 (金)  『「戦後」のヒストリオグラフィー 』成田 龍一 / 日本女子大学教授
「戦後」は終わった、といわれ続けながら、2015年には「戦後70年」のキャンペーンがありました。終わろうとしない「戦後」、過ぎ去ろうとしない「戦後」の光景が、ここにうかがえます。考えてみれば、「戦後」はたえず、<いまだ>(「戦後」である)と<もはや>(「戦後」ではない)のあいだで、今日まで推移してきているように思います。代表的な論者とその議論を紹介しながら、「「戦後」の戦後史」を探ってみたいと思います。

10/26(金)『原爆被害をもたらしたもの―記憶、責任、対米意識』直野 章子 / 広島市立大学広島平和研究所教授
 2016年のオバマ米大統領の広島訪問時にみられたように、アメリカ合衆国の原爆投下責任を問う声は、被爆地でもほとんど聞かれなくなりました。「敵対国」から「同盟国」へと戦後日本の対米認識が変容するなか、原爆被害者もアメリカと和解したといえるのでしょうか。本講義では、原爆体験記を主たる手掛かりとして、原爆被害に対する責任の捉え方の変化について、原爆の記憶の在り方や対米意識との関係のなかで考えていきたいと思います。

11/2 (金) 『戦後ドイツの「戦争」認識 』竹本 真希子 / 広島市立大学広島平和研究所准教授
日本とドイツは第二次世界大戦時の同盟国であり、ともに敗戦国となったことで、その歴史がよく比較されています。しかし実際には、1945年以降の両国の道のりは様々な点で大きく異なっており、「戦後」という言葉で理解されるものも、ドイツと日本では違っているように思われます。本講義では、西ドイツを中心にドイツ史の大きな転換点と戦争認識の変化を取り上げ、ドイツの「戦後」の歩みを振り返ります。

11/9 (金)『日本人は小野田元少尉をどう見たか―フィリピン残留日本兵をめぐる語り』 永井 均 / 広島市立大学広島平和研究所教授
1974年3月、フィリピンのルバング島のジャングルに約30年間潜んでいた小野田寛郎元少尉が投降し、日本に帰還しました。かつて日本軍が侵攻したアジア太平洋地域では、終戦後も様々な事情から投降せず、長く復員しなかった兵士が少なくありません。最大の激戦地フィリピンにも残留兵が存在し、小野田元少尉は最後の投降者でした。日本国民は元少尉をどう迎えたのか。本講義では、残留日本兵の問題を通して日本人の戦争観を探ります。

11/16(金)『「戦後の象徴」としての憲法9条』 河上 暁弘 / 広島市立大学広島平和研究所准教授
 戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を規定した憲法9条が、戦後日本の「平和国家」としての性格を形成し基礎づけた一方で、その条項が文字通り実行されたことはなく、常に軍事化(再軍備・米軍協力等)との間で緊張関係を形成してきました。こうした戦後日本の歩みを、憲法9条の空洞化と定着の両側面の契機と過程に注目しつつ、今回は特に1950-60年代の丸山眞男、宮澤俊義、小林直樹などの言説とともに探ってみたいと思います。


講師紹介

成田龍一 / 日本女子大学教授 
1951年、大阪市生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。東京外国語大学外国語学部助教授を経て、1990年より日本女子大学人間社会学部に着任し、現在に至る。この間、フランス社会科学高等研究院・招聘助教授などを務める。専門分野は、近現代日本史、歴史学。著書に、『「戦争経験」の戦後史』(岩波書店、2010年)、『近現代日本史と歴史学』(中公新書、2012年)、『戦後史入門』(河出文庫、2015年)、『「戦後」はいかに語られるか』(河出書房新社、2016年)など。共著に、小森陽一・本田由紀『岩波新書で「戦後」をよむ』(岩波新書、2015年)がある。

直野章子/ 広島市立大学広島平和研究所教授  
兵庫県西宮市出身。2002年、カリフォルニア大学大学院サンタクルーズ校にて社会学Ph.D.取得。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て05年から九州大学大学院比較社会文化研究院准教授を務めた後、16年10月、広島平和研究所に着任。主な著作に『原爆体験と戦後日本』、『「原爆の絵」と出会う』(共に岩波書店)、To See Once More the Stars: Living in a Post-Fukushima World(共著、New Pacific Press)、『被ばくと補償』(平凡社新書)、『津波の後の第一講』(共著、岩波書店)、Toward a Sociology of the Trace(共著、University of Minnesota Press)、『ヒロシマ・アメリカ』(渓水社、第3回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞)など。

竹本真希子 / 広島市立大学広島平和研究所准教授  
1971年、茨城県生まれ。専修大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。ドイツ・オルデンブルク市カール・フォン・オシエツキー大学政治学博士。専修大学大学院社会知性開発研究センター・歴史学研究センター任期制助手を経て、2005年に広島市立大学広島平和研究所助手、2008年講師、2017年より現職。専門はドイツ近現代史、平和運動・平和思想史。主な研究業績に『ドイツの平和主義と平和運動――ヴァイマル共和国期から1980年代まで』(法律文化社、2017年)など。

永井均 / 広島市立大学広島平和研究所教授 
1965年、米国カリフォルニア州生まれ。立教大学大学院文学研究科博士課程後期課程満期退学。博士(文学)。専攻は日本近現代史、日本・フィリピン関係史。関東学院大学、女子栄養大学、共立女子大学などの非常勤講師を経て、2002年、広島平和研究所に着任。2016年より現職。単著に『フィリピンと対日戦犯裁判』(岩波書店、2010年)、『フィリピンBC級戦犯裁判』(講談社、2013年、第25回アジア・太平洋賞特別賞)、共著に『日記に読む近代日本』第5巻(吉川弘文館、2012年)、『フィリピンを知るための64章』(明石書店、2016年)、Transcultural Justice at the Tokyo Tribunal: The Allied Struggle for Justice, 1946-48 (Leiden: Brill, 2018)などがある。

河上暁弘 / 広島市立大学広島平和研究所准教授  
富山県富山市生まれ。中央大学法学部政治学科卒業、中央大学大学院法学研究科公法専攻博士前期課程修了、専修大学大学院法学研究科公法学専攻博士後期課程修了、博士(法学)。中央大学人文科学研究所客員研究員等を経て、2008年4月より広島市立大学広島平和研究所講師、2014年4月より現職。専門は憲法学。著書(単著)として、『平和と市民自治の憲法理論』(敬文堂、2012年)、『日本国憲法第9条成立の思想的淵源の研究』(専修大学出版局、2006年)がある。

(敬称略)