広島平和研究所

連続市民講座(2013年度後期) 

ビキニ水爆被災再考―被災60年を迎えて

 

 広島平和研究所では、2014年2月14日から3月14日まで広島市まちづくり市民交流プラザにおいて、下記のとおり2013年度後期の連続市民講座を開催しました。
 市民講座の内容は、当研究所機関紙掲載の記事でご覧いただけます。
 (『HIROSHIMA RESEARCH NEWS』第17巻1号内記事)

 


 

■講座名:ビキニ水爆被災再考―被災60年を迎えて

【概要】

 今年(2014年)は、マーシャル諸島ビキニ環礁での米水爆実験で第五福竜丸が被災してから60年目にあたります。第五福竜丸は1954年3月1日に水爆被災しましたが、同船以外にも約1000隻以上の日本漁船が「死の灰」(放射性降下物)を浴びて被ばくしました。他方、水爆実験場近隣のロンゲラップ環礁等にも「死の灰」が降り積もり、住民たちが深刻な健康被害を受けました。
 久保山愛吉無線長がわずか半年後に亡くなり、また「汚染マグロ」が大量に廃棄されるなど日常生活に密接に関わる影響もあって、日本国内では、第五福竜丸の被災をきっかけに原水爆禁止運動が始まります。核実験を行った米国でも、第五福竜丸の被災を契機に放射性降下物への関心が高まり、反核世論の形成につながりました。その一方で、ビキニ被災による被害の全体像は、今日もなお、充分には解明されていません。広島・長崎の被爆状況がアメリカによって情報統制されたのと同じように、ビキニ水爆被災もまた、機密情報として扱われたからです。とりわけ内部被ばくの実態解明が不充分なまま、2011年3月11日に東日本大震災が発生し、福島第一原発事故が起きてしまいました。核による被災状況を再び隠蔽させてはいけません。
 被災60年という節目の年に、ビキニ水爆被災の史実と被害の実態、現在に続く世界的な影響や今日的意味について、最新の研究成果に基づいて再考します。 

 

■日時:2月14・21・28日、3月7・14日 金曜日 全5回
18:30~20:30 (講義90分、質疑応答30分)

 

■会場:広島市まちづくり市民交流プラザ 北棟6階 マルチメディアスタジオ
(広島市中区袋町6番36号 電話082-545-3911)

 

■定員:100名  

 

■講義内容等
(1) 2/14(金)
豊﨑 博光 「隠され、忘れられるマーシャル諸島の核実験被害」
1954年のビキニ水爆実験を含むアメリカの核実験によるマーシャル諸島の人々と暮らしへの被害が日本に知らされたのは1970年のことです。それは、広島と長崎への原爆投下被害に続く第3の日本人の被ばく被害・マグロ漁船「第五福竜丸」被災の向こう側の被害でしたが、日本人の反応は小さいものでした。ビキニ水爆実験から60年、マーシャル諸島の被ばく被害を学ぶことから核被害、放射線被ばく被害の実相を考えます。

 

(2) 2/21(金)
高橋 博子 「ビキニ水爆被災研究の現在」
核実験を指揮した米原子力委員会は、「プロジェクト・サンシャイン」という世界に広がる放射性降下物の影響についての研究を実施し、実験による人体への影響を重視する一方で、ビキニ水爆実験による人々への影響は深刻ではないとし、過小評価した公式発表を行っていました。本報告では、公式発表と極秘に進められた研究との格差に注目しつつ、ビキニ水爆被災への実相解明が不充分になっていった背景を検証したいと思います。

 

(3) 2/28(金)
山下 正寿 「隠されたビキニ被災漁船員の実相」
「ビキニ水爆実験=第五福竜丸」という認識は、意図的につくられた現代史の矮小です。第五福竜丸以外のマグロ船と貨物船など延べ1000隻の被災の実態と乗組員の健康状態追跡調査にこれまで28年間取り組んできました。放射能雨や海洋汚染による漁船員の放射能内部被ばくの実態を明らかにすることで、福島原発被災による人体への影響を予測し、対策を立てる上で参考にしてゆきます。

 

(4) 3/7(金)
丸浜 江里子 「3.11からふり返る1954年と杉並の原水禁署名運動」
体験者の証言や資料をもとに杉並の原水禁署名運動について研究する中で、戦後の日米関係、原発導入問題へと関心を深めてきました。3.11は、その二つが戦後日本政治の根幹にかかわっていることを伝えています。3.11を踏まえて、ビキニ事件が起こり、原水禁署名運動が起こった1954年とはどういう年だったのか、どんな方向付けがなされ、民衆はどう運動したのか考察し、今に生きる知恵をともに考えたいと思います。

 

(5) 3/14(金)
ロバート・ジェイコブズ 「ビキニ水爆実験――核戦争計画および環境問題への意識の変容」
ビキニ環礁で行われた核実験は、航空機に搭載可能な水爆実験としては初のものでした。100キロ先でも死者が出るという放射性降下物の影響は、幾つかの相反する結果をもたらしました。米国の戦略家が放射性降下物の影響を核兵器使用計画の上で最たるものと捉えた一方で、世界中の人々が、生態系への広範な影響に驚愕し、環境問題への意識を高める結果となったのです。被災から60年を経たマーシャル諸島で講義の直前まで現地調査を行い、現在の状況を報告します。

 

■講師紹介

豊﨑 博光 / ジャーナリスト                                       
  1948年、神奈川県横浜市生まれ。1968年に東京写真専門学院(現、東京ビジュアルアーツ)報道写真科二部を卒業後、フリーとなり、世界のヒバクシャを取材。拓殖大学、中央大学で非常勤講師として〝核の時代史〟の授業を行う。著書に『核よ驕るなかれ』(講談社)、『グッドバイ・ロンゲラップ』(築地書館)、『蝕まれる星・地球』(平和のアトリエ)など。『アトミック・エイジ』(築地書館)で第1回平和・協同ジャーナリスト基金賞を受賞(1995年)、『マーシャル諸島 核の世紀』(日本図書センター)で日本ジャーナリスト会議賞を受賞(2005年)。共著に、『水爆ブラボー 3月1日ビキニ環礁・第五福竜丸』(草の根出版会)など。


高橋 博子 / 広島市立大学広島平和研究所講師                                         
  1969年、兵庫県生まれ。広島市立大学広島平和研究所講師。同志社大学文学研究科より博士号(文化史学)取得。広島平和記念資料館資料調査研究会委員、都立第五福竜丸展示館専門委員、日本平和学会グローバルヒバクシャ分科会共同代表。著書に『新訂増補版 封印されたヒロシマ・ナガサキ』(凱風社、2012年)。論文に「冷戦下における放射線人体影響の研究」(『日本の科学者』2013年1月号)、「原爆・核実験被害関係資料の現状」(『歴史評論』2011年11月号)など。監訳にロバート・ジェイコブズ著『ドラゴン・テール』(凱風社、2013年)。第2回日本平和学会平和研究奨励賞受賞(2008年)。


山下 正寿 / 太平洋核被災支援センター事務局長・幡多高校生ゼミナール顧問会長                                               
  1945年、高知県宿毛市生まれ。幡多高校生ゼミナールは「地域の現代史調査を通じて平和と青春の生き方を見つめる」サークル活動で、1985年から地域のビキニ水爆実験被災船調査に取り組み、延べ1000隻を越える被災船を追跡調査し、『もうひとつのビキニ事件』(平和文化)を執筆(第10回平和・協同ジャーナリスト基金大賞)。2011年福島原発事故後、27年継続したビキニ被災と福島原発被災を結び『核の海の証言』(新日本出版社)を執筆。また、近年のビキニ調査がドキュメンタリー映画「放射能を浴びたX年後」に収録され、映画館・自主上映が全国で展開されている。


丸浜 江里子 / 都留文科大学非常勤講師                                           
  1951年、千葉県生まれ。横浜市立大学文理学部文科卒業後、東京の公立中学校社会科教員となる。2004年に明治大学大学院文学研究科に進学。杉並における原水禁署名運動の研究を始めた。第1回平塚らいてう賞奨励賞、2011年度駿台史学会選奨受賞。著書に『原水禁署名運動の誕生―東京・杉並の住民パワーと水脈』(凱風社、2011年)、共編に『<日中韓3国共同編集>未来をひらく歴史』(高文研、2005年)、『<日中韓3国共同編集>新しい東アジアの近現代史』(日本評論、2012年)がある。


ロバート・ジェイコブズ / 広島市立大学広島平和研究所准教授                                             
  1960年、米国フロリダ州生まれ。米国イリノイ大学にて博士号取得(歴史学)。イリノイ大学教員、広島平和研究所講師などを経て、2010年より現職。核技術を社会文化史の側面から捉えて研究し、現在、世界のヒバクシャから聞き取り調査を行うグローバル・ヒバクシャ・プロジェクトに取り組んでいる。著書に『ドラゴン・テール』(凱風社、2013年)、The Dragon’s Tail: Americans Face the Atomic Age (University of Massachusetts, 2010)、編著書に Filling the Hole in the Nuclear Future: Art and Popular Culture Respond to the Bomb (Lexington, 2010) などがある。

 

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