広島平和研究所

連続市民講座(2013年度前期) 

いま、人権と平和を考える

 

 広島平和研究所では、2013年5月24日から6月21日まで広島市まちづくり市民交流プラザにおいて、下記のとおり2013年前期の連続市民講座を開催しました。
    市民講座の内容は、当研究所機関紙掲載の記事でご覧いただけます。
     (『HIROSHIMA RESEARCH NEWS』第16巻2号内記事)

 


 

■講座名:いま、人権と平和を考える

【概要】

 戦後、日本では、日本国憲法が制定され、国民の基本的人権を確実に保障するための法制度の整備が行われました。しかし、他方で、現実には、基地問題、教育問題(いじめ、受験競争、教科書検定、日の丸・君が代問題等)、生活保護基準や福祉行政、靖国神社問題、一票の格差問題、差別問題(性別、国籍、門地等による差別)などをめぐって、国民の人権(「いのち」と「くらし」と「自分らしさ」)の保障のあり方が、政治や裁判のレベル、そして日常生活においても、重要な問題として提起され続けてきたことを忘れてはならないと思います。
 現在の日本は、そこに暮らす全ての人が、平和的で良好な環境の下で、いのちと尊厳が守られ、また個人として尊重され、物心ともにゆたかなくらしが保障されていると言えるでしょうか? また、もし、そうしたことが実現していないとすれば、いったいどこに原因があり、その対策として、私たちは今後どのような法制や政策が必要なのでしょうか?
 本講座では、平和、教育、福祉、政教分離、参政権等の分野を中心に、あらためて現在の日本の人権状況を「国家と人権」の関係という基本視座から再検討し、人権・民主主義・平和確立の道、その方法論について、議論をしていきたいと思います。
 

 

■日時:5月24・31日、6月7・14・21日 金曜日 全5回
18:30~20:30 (講義90分、質疑応答30分)

 

■会場:広島市まちづくり市民交流プラザ 北棟6階 マルチメディアスタジオ
(広島市中区袋町6番36号 電話082-545-3911)

 

■講義内容等
(1) 5/24(金)
河上 暁弘 「政教分離原則と靖国問題」
憲法20条では、信教の自由を保障するとともに、国及びその機関による宗教活動の禁止等という形で、「政教分離」の原則を定めています。しかし、戦後、首相の靖国神社への公式参拝問題をはじめとして、この原理をめぐって常に鋭い意見対立・論争が起きてきました。そもそもこの政教分離原則は、国民の人権保障全体にとっていかなる意味を持つものなのでしょうか? 今回は、そのことを、人権論、国家論に遡って原理的に探り、深めて行きたいと思います。

 

(2) 5/31(金)
小林 武 「平和的生存権と私たちの憲法」
私たちの日本国憲法は、前文で、「全世界の国民が」「平和のうちに生存する権利を有する」と謳っています。この平和的生存権は、よく知られた第9条とともに、憲法の平和主義の柱を成し、憲法全体の土台となっています。平和のうちに生きようという理念は国際的に共有されたものですが、これを一国の憲法の中に採り入れ、人々の「権利」として保障したのは日本国憲法だけです。講義では、現実政治にも目を配りながら、いま平和的生存権が持つ意義は何かを考えます。

 

(3) 6/7(金)
上脇 博之 「国民主権と選挙権」
国民主権の下で国会は主権者国民の代表機関であり、憲法はこれを通じて議会制民主主義の実現を目指しています。しかし、衆議院の小選挙区選挙や比例代表選挙の議員定数削減は、膨大な死票を生み、民意の国会への正確・公正な反映を妨げているどころか歪曲し、民意とは正反対の政治の強行を許しています。これでは議会制民主主義が実現しているとは言えません。主権者国民が適切に選挙権を行使できる選挙制度とは何か、考えます。

 

(4) 6/14(金)
二宮 厚美 「憲法9条プラス25条における平和的生存権」
日本の憲法は、その前文において、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と述べています。この平和的生存権の保障は、憲法第9条と第25条において果たされることになります。両条項は、あたかも双子の兄妹のような関係にあります。講義では、現代日本における平和的生存権の保障にとって、特に憲法第25条が持つ意義を説明します。

 

(5) 6/21(金)
堀尾 輝久 「人権としての教育ー地球時代、憲法、子供の権利条約を軸に」
子どもと教育をめぐる状況は深刻です。いじめ、体罰は被害者・加害者双方の人格的尊厳に関わる問題です。しかしそれらを、総じて暴力の文化を、容認する歴史的土壌や学校文化があるとも言われています。私たちの歴史と文化が問われているのです。さらに、人間にとって、子どもにとって、社会と国家にとって、教育とは何か、学校とは何かが問われているのです。
私たちには憲法があり子どもの権利条約があります。教育は人権であり学びは子どもの権利の中核です。子どもたちは平和の文化のなかで育ち、その学びは地球時代を拓く力となる、それを励ますのが私たちの責任だと思います。

 

■講師紹介
河上 暁弘 / 広島市立大学広島平和研究所講師
富山県富山市生まれ。中央大学法学部政治学科卒業、中央大学大学院法学研究科公法専攻博士前期課程修了、専修大学大学院法学研究科公法学専攻博士後期課程修了、博士(法学)。中央大学人文科学研究所客員研究員、明星大学人文学部非常勤講師等を経て2008年4月より現職。専門は憲法学。著書として、『平和と市民自治の憲法理論』(敬文堂、2012年)、『日本国憲法第9条成立の思想的淵源の研究』(専修大学出版局、2006年)などがある。

 

小林 武 / 沖縄大学客員教授
1941年京都市生まれ。南山大学法学部教授、愛知大学法科大学院教授を2011年に定年退職し、沖縄に移住。現在、沖縄大学客員教授、琉球大学法文学部・法科大学院講義担当、沖縄国際大学特別研究員。憲法学専攻、法学博士。弁護士。著書は、今回の講義に直接関係するものとして『平和的生存権の弁証』(日本評論社、2006年)がある。他に、『ようこそ日本国憲法へ』(法学書院、2009年)、『憲法と地方自治』(共著、法律文化社、2007年)、『人権保障の憲法論』(晃洋書房、2002年)、『憲法判例論』(三省堂、2002年)、『地方自治の憲法学』(晃洋書房、2001年)、『自治体憲法』(共著、学陽書房、1991年)、『現代スイス憲法』(法律文化社、1989年)など。

 

上脇 博之 / 神戸学院大学大学院実務法学研究科教授 

 1958年鹿児島県生まれ。関西大学法学部卒業後、神戸大学大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(法学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、北九州市立大学法学部教授を経て、2004年から現職。専門は憲法学。単著『なぜ4割の得票で8割の議席なのか』(日本機関紙出版センター、2013年)、『議員定数を削減していいの?』(同、2011年)、『ゼロからわかる政治とカネ』(同、2010年)、『政党国家論と国民代表論の憲法問題』(日本評論社、2005年)、『政党助成法の憲法問題』(同、1999年)、『政党国家論と憲法学』(信山社、1999年)。

 

二宮 厚美 / 神戸大学名誉教授

 1947年愛媛県生まれ。1974年京都大学経済学研究科修士課程修了。経済学、社会環境論専攻。著書は『橋下主義解体新書』(高文研、2013年)、『新自由主義からの脱出』(新日本出版、2012年)、『福祉国家型地方自治と公務労働』(共著、大月書店、2011年)、『新自由主義の破局と決着』(新日本出版社、2009年)、『格差社会の克服』(山吹書店、2007年)、『憲法25条+9条の新福祉国家』(かもがわ出版、2005年)等。

 

堀尾 輝久 / 東京大学名誉教授
1933年福岡県生まれ。東京大学法学部卒業、同大学院博士課程修了・教育学博士。東京大学教育部教授、中央大学文学部教授を経て、現在、東京大学名誉教授。日本教育学会会長、日本学術会議会員、日本教育法学会会長、民主教育研究所代表などを歴任。仏政府よりパルム・アカデミック賞、トゥールーズ大学より名誉博士号を授与される。著書に、『未来をつくる君たちへ』(清流出版、2011年)、『教育に強制はなじまない』(大月書店、2006年)『地球時代の教養と学力』(かもがわ書店、2005年)、『教育の自由と権利』(新版、青木書店、2002年)、『現代社会と教育』(岩波書店、1997年)、『人権としての教育』(同、1991年)、『教育入門』(同、1989年)、『現代教育の思想と構造』(同、1971年)などがある。


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