広島平和研究所

連続市民講座(2014年度前期)

緊張する東アジア国際関係―何が東アジア平和の障害となっているのか

 

 広島平和研究所では、2014年6月6日から7月4日まで広島市まちづくり市民交流プラザにおいて、下記のとおり2014年度前期の連続市民講座を開催しました。

 

 


 

■講座名:緊張する東アジア国際関係―何が東アジア平和の障害となっているのか

【概要】

 今日の東アジアは、世界で最も緊張が高まっている地域となってきています。欧州では国際統合が進み、その結果、世界で最も安定した地域となっていますが、東アジアでは、民間レベルでの交流は進み、経済的な相互依存関係が進展しているにもかかわらず、例えば、日韓関係では歴史問題に領土問題が重なり、政府間関係の改善の見通しは立っていません。日中関係においては、軍拡や同盟強化の動きも加わり、いまや武力衝突の可能性まで取りざたされるようになっています。
  「平和国家」日本、「被爆国家」日本を取り巻く国際環境が、世界で最も緊張に満ち、不安定な地域の一つとなっているのには、いったいどこに原因があるのでしょうか。
今回の講座では、東アジアにおける「領土ナショナリズム」の現状と構造を分析し、日韓関係、日露関係に存在する課題を検討します。また、北朝鮮の核開発や拉致問題の背景と解決の見通しについて、さらに、日本についても、靖国神社参拝、憲法改正、集団的自衛権行使といった政府の政策や方針が国内外に与える影響について考察し、日本を取り巻くさまざまな問題の背景および解決への見通しを考えたいと思います。

 

■日時:6月6・13・20・27日、7月4日 金曜日 全5回
18:30~20:30 (講義90分、質疑応答30分)

 

■会場:広島市まちづくり市民交流プラザ 北棟6階 マルチメディアスタジオ
(広島市中区袋町6番36号 電話082-545-3911)

 

■講義内容等
(1) 6/6(金)
金 栄鎬「日韓関係と東アジアの平和」
日本と韓国は、成熟した市場経済と民主主義政治体制をもち、米国との軍事同盟も共有しています。しかし、とりわけ1990年代以来、歴史問題・領土問題・北朝鮮問題などで摩擦を経てきました。日韓関係は2012年からは「過去最悪」と言われますが、摩擦を生む構造は最近できたわけではありません。近隣国間の摩擦は憂鬱で重苦しいものである一方、国際政治学の興味ある観察対象であり、地域の平和を考える試金石でもあると思います。

 

(2) 6/13(金)
玄 大松「東アジアの領土紛争とナショナリズム」
2010年以降、東アジアで領土紛争が頻繁に噴出し、日中韓の社会でナショナリズムが高揚しています。この講義では、東アジアの安定を揺るがす要因について領土問題を切り口として探っていきます。まず「独島・竹島問題」と「尖閣諸島・釣魚台問題」の起源と争点および領土問題をめぐる国際政治と国内政治の連動について解説したうえで、領土問題の見方、領土ナショナリズムの越え方などについて考えてみたいと思います

 

(3) 6/20(金)
河上 暁弘「安倍政権の憲法政策と平和」
安倍晋三政権は、国家安全保障会議設置法や特定秘密保護法を成立させ、また、靖国神社参拝、「村山談話」「河野談話」の見直しの可能性への言及を行いました。今後、集団的自衛権の行使の解釈変更による合憲化、日米同盟の強化、武器輸出禁止原則の見直し、敵基地攻撃能力の保持、憲法改正などを目指すことを言明しております。こうしたことが国内外にもたらす影響等について、平和と立憲主義の観点から検証してみたいと思います。

 

(4) 6/27(金)
孫 賢鎮「北朝鮮の核と拉致問題」
北朝鮮の核およびミサイル開発の問題は朝鮮半島にとどまらず日本、米国にも脅威となりうる問題です。北朝鮮は体制保障、経済支援などの目的で核開発およびミサイル発射を行っていると考えられています。さらに拉致問題は韓国、日本で未解決となっています。韓国では朝鮮戦争時、8万人以上、戦後も4千人が拉致され、そのうち500人がまだ北朝鮮に残されているとされ、日本でも10人以上の人が拉致され北朝鮮に抑留されているとみなされています。本講義ではこれらの問題を解決し、東アジア地域へ平和と安定をもたらす方策について考察します。

 

(5) 7/4(金)

シュラトフ, ヤロスラブ (SHULATOV, Yaroslav)「日露関係の現状と諸問題」
近年、日露関係は極めてダイナミックに動いています。領土問題および平和条約締結の問題は依然として存在するものの、経済関係は急激に発展し、民間交流も盛んに行われています。本講義では、日露間の外交・経済関係、文化・民間交流のような側面に着目し、両国関係の現状を明らかにしつつ、それらを東アジアにおける国際情勢の枠組において解説したいと思っています。

 

■講師紹介

金 栄鎬 キム・ヨンホ / 広島市立大学国際学部教授                                      
  1961年東京都生まれ。2003年、明治学院大学大学院国際学研究科博士後期課程修了、博士(国際学)。同年、明治学院大学国際学部非常勤講師、2004年、広島市立大学国際学部助教授、2007年、同准教授を経て、2012年より現職。専門は政治学・国際関係、現代韓国朝鮮研究。著書に、『日韓関係と韓国の対日行動』(彩流社、2008年)、『現代アジアの変化と連続性』(共著、彩流社、2008年)、『理論と地域からみる国際関係』(共編著、近刊)など。


玄 大松 ヒョン・デソン / 国民大学研究教授・韓国                                      1961年韓国釜山生まれ。韓国外国語大学政治外交学科卒業、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は日韓関係・東アジア国際政治。日本学術振興会外国人研究員、東京大学東洋文化研究所准教授を経て、2010年9月より現職。著書は、『韓国と日本の歴史認識―独島・靖国・慰安婦・教科書問題の根源と争点』(ソウル:ナナム、2008年)、『領土ナショナリズムの誕生―「独島/竹島問題」の政治学』(ミネルヴァ書房、2006年:第19回アジア太平洋賞特別賞受賞)など。


河上 暁弘 カワカミ・アキヒロ / 広島市立大学広島平和研究所准教授                              
富山県富山市生まれ。中央大学法学部政治学科卒業、中央大学大学院法学研究科公法専攻博士前期課程修了、専修大学大学院法学研究科公法学専攻博士後期課程修了、博士(法学)。中央大学人文科学研究所客員研究員、明星大学人文学部非常勤講師等を経て、2008年4月より広島市立大学広島平和研究所講師、2014年4月より現職。専門は憲法学。著書(単著)として、『平和と市民自治の憲法理論』(敬文堂、2012年)、『日本国憲法第9条成立の思想的淵源の研究』(専修大学出版局、2006年)がある。


孫 賢鎮 ソン・ヒョンジン / 広島市立大学広島平和研究所准教授                                 1971年韓国釜山市生まれ。釜慶大学法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科公共関係法専攻博士前期課程修了、神戸大学大学院法学研究科公共関係法専攻博士後期課程修了。博士(法学)。2006年~2011年、韓国統一部事務官(拉致問題、離散家族、北朝鮮人権担当)、2011年~2014年、韓国法制研究院勤務を経て2014年4月より現職。専門は国際法、北朝鮮法。主な研究業績に、「拉北者、国軍捕虜問題の再考察」『国際法学会論叢』(大韓国際法学会、2013年)、「北朝鮮の体制転換に伴う北朝鮮住民の人権改善策の研究」『国連人権機構と北朝鮮の人権』(統一研究院、2013年)など。


シュラトフ, ヤロスラブ (SHULATOV, Yaroslav) / 広島市立大学国際学部講師                          ロシア極東出身。ハバロフスク国立教育大学東洋学部卒業。ロシアと日本で博士後期課程修了、2005年、極東国立人文大学より歴史学博士、2010年、慶應義塾大学より博士(法学)。東京大学総合文化研究科特別研究員(日本学術振興会)、北海道大学スラブ研究センターITPフェロー、ハーバード大学デヴィスセンター客員研究員を経て2013年4月より現職。専門は日露関係、東アジアにおける国際関係史。著書に『協力に向かって―1905-1914の日露関係』(ロシア科学アカデミー東洋学研究所)など。