広島平和研究所

連続市民講座(2015年度後期)

戦後70年の論点と課題

 

 広島平和研究所では、2015年11月6日から12月11日まで広島市まちづくり市民交流プラザにおいて、下記のとおり2015年度前期の連続市民講座を開催しました。

 

 


 

■講座名:戦後70年の論点と課題

【概要】

 本年・2015年は、第二次世界大戦終結および広島・長崎への原爆投下から70年の節目となります。これまでの市民講座において、「第一次世界大戦」(2014年度後期)と「第二次世界大戦」(2015年前期)をテーマとし、2度の大戦の歴史的意味とそれらが現在の平和のあり方を考える上でいかなる影響があるかなどの点について検討を深めてきました。本講座では、これらの講座に引き続き、日本と国際社会の<戦後70年>のあゆみ、論点、課題をいかに捉えるかについて、広島市立大学広島平和研究所の研究員5名が問題提起をする形で、皆さまとともに考えてみたいと思います。
今回の講座では、国際政治学、憲法学(憲法社会学)、国際法学、歴史学等の視点から、戦後70年における、①国際社会のあゆみ、②日本の「平和」の構造、③戦後ドイツのあゆみ、④多数国間の軍縮交渉・条約のあゆみ、⑤核軍縮・廃絶のあゆみの5つをとり上げます。これらの分析を通して、戦後70年目を迎えた日本・広島の地において、戦後の日本と国際社会における「平和」の歴史と構造、そして課題を分析し、現在の平和構築の国内的・国際的な条件・政策について考察します。

 

■日時:11月6日、13日、20日、12月4日、11日(金曜日)全5回
18:30~20:30 (講義90分、質疑応答30分)

 

■会場:合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ) 北棟6階 マルチメディアスタジオ
広島市中区袋町6番36号 電話 082-545-3911

 

■講義内容等
(1) 11/6(金)湯浅 剛「『国際社会』と日本のあゆみ」
この報告での論点は日本の対外・安全保障政策です。私はこの問題を戦後70年の国際政治の変容と相関するものとして捉えたいと思います。米ソ両陣営が対峙する二極構造からソ連の解体へ、そして近年ではパワーシフトと呼ばれる世界的な秩序変動が進行しています。このような変化の中で、日本の対外・安全保障政策は紆余曲折を経てはいますが、70年という尺度から俯瞰すると一定の方向性があるようにも見受けられます。過去の歴史から将来の課題を浮き彫りにすることもここでの狙いです。

 

(2) 11/13(金)河上 暁弘「戦後日本の『平和』の構造」
戦後日本の憲法史を振り返りながら、①グローバルな冷戦体制、②リージョナルな日米安保体制、③ナショナルな自民党政権と55年体制、④ソーシャルな企業社会の「四重構造」(加藤哲郎)の下で歩んで来たとも言われる戦後日本社会の政治・経済構造について考えます。また、それが今日いかなる変化を見せようとしているのかについても考察し、戦後日本の「平和」の構造について憲法社会学の視点から検討を加えてみたいと思います。

 

(3) 11/20(金)竹本 真希子「戦後70年のあゆみと論点――ドイツの例から」
本講義では、2度の世界大戦とその後の戦争と平和をめぐる議論において中心的な位置にあるドイツ(西ドイツ・統一ドイツ)を取り上げます。ドイツの人々が両大戦をどう捉え、どう議論してきたのか、ナチの過去との取り組みである「過去の克服」や反核運動、平和運動の例を中心に振り返ります。さらに歴史認識や戦争責任といった問題について日本の議論との違いも示しつつ、戦後70年の平和をめぐる課題を考えていきます。

 

(4) 12/4(金)福井 康人「戦後の軍縮と国際法――条約交渉枠組みから」
本講義では、15年近く長期にわたる軍縮会議の停滞状況が続く中で、その活性化の努力を含めて軍縮会議の現状を概観します。同時に、新たな試みとして軍縮会議以外の交渉枠組みによる対人地雷禁止条約およびクラスター弾に関する条約の交渉、さらには国連総会決議による交渉権限により条約交渉が行われた武器貿易条約を例にとり、軍縮分野における多数国間条約の交渉枠組み、さらに今後の軍縮条約交渉の見通しについても明らかにします。

 

(5) 12/11(金)水本 和実「戦後の核軍縮と被爆体験――被爆地の役割
戦後70年の歴史における最大の未解決問題の1つは、核兵器の完全な規制・排除をいまだに達成できていないことです。講義では、①米国による原爆開発から戦後の核軍拡の経過、②核軍縮の取り組み、③被爆体験を土台にした核兵器の危険性・非人道性の訴えについて、振り返ります。その上で、核兵器の完全な規制・排除へむけ、国際社会、被爆国・日本、そして被爆地・広島に課せられた課題や役割について考えます。

 

■講師紹介

湯浅 剛 ユアサ・タケシ / 広島市立大学広島平和研究所教授                                
  1968年埼玉県生まれ。1992年上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。2001年上智大学大学院外国語学研究科国際関係論専攻博士後期課程満期修了退学。在デンマーク日本大使館専門調査員、防衛庁(2007年より防衛省)防衛研究所教官、防衛庁防衛局防衛政策課事務官・部員、北海道大学スラブ研究センター客員准教授などを経て、2015年より現職。専門分野はポスト・ソ連空間の地域機構、政治変動、安全保障。著書として『現代中央アジアの国際政治』(明石書店、2015年)、『平和構築へのアプローチ』(共編著、吉田書店、2013年)など。


河上 暁弘 カワカミ・アキヒロ / 広島市立大学広島平和研究所准教授

 富山県富山市生まれ。中央大学法学部政治学科卒業、中央大学大学院法学研究科公法専攻博士前期課程修了、専修大学大学院法学研究科公法学専攻博士後期課程修了、博士(法学)。中央大学人文科学研究所客員研究員、明星大学人文学部非常勤講師等を経て、2008年4月より広島市立大学広島平和研究所講師、2014年4月より現職。専門は憲法学。著書(単著)に『平和と市民自治の憲法理論』(敬文堂、2012年)、『日本国憲法第9条成立の思想的淵源の研究』(専修大学出版局、2006年)など。


竹本 真希子 タケモト・マキコ / 広島市立大学広島平和研究所講師                             
  1971年茨城県生まれ。専修大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。ドイツ・オルデンブルク市カール・フォン・オシエツキー大学政治学博士。専修大学大学院社会知性開発研究センター・歴史学研究センター任期制助手を経て、2005年に広島市立大学広島平和研究所助手に着任。2008年より現職。専門はドイツ近現代史、平和運動・平和思想史。主な研究業績に「ヴァイマル共和国期の急進的平和主義者にとっての軍縮と平和――『ヴェルトビューネ』の記事から」(『専修史学』第56号、2014年)など。


福井 康人 フクイ・ヤスヒト / 広島市立大学広島平和研究所准教授

 1964年兵庫県生まれ。2013年パリ第1(パンテオン・ソルボンヌ)大学法科大学院で博士号(法学)を取得。専門は国際法(軍縮国際法、国際人権人道法等)。1998年外務省入省後、人権難民課、報道課、軍備管理軍縮課、不拡散科学原子力課、国際組織犯罪室、国際平和協力室、軍縮会議日本政府代表部、在ルーマニア日本大使館、南山大学外国語学部(客員教授)等で勤務。2015年3月外務省を退職し、同年4月広島市立大学広島平和研究所に赴任。主な著書は『軍縮国際法の強化』(信山社、2015年)。


水本 和実 ミズモト・カズミ / 広島市立大学広島平和研究所副所長・教授

 1957年広島市生まれ。1981年東京大学法学部卒業・朝日新聞社入社。盛岡支局、川崎支局、東京本社社会部を経て社内留学制度により1989年米国タフツ大学フレッチャー法律外交大学院修士課程修了。1995年朝日新聞社ロサンゼルス支局長、1998年広島平和研究所准教授などを経て、2010年より現職。専門分野は国際政治、国際関係論、核軍縮。著書に『核は廃絶できるか――核拡散10年の動向と論調』(法律文化社、2009年)など。