広島平和研究所

1999年12月15~17日 国際シンポジウム

第2回「北東アジアにおける平和の追求」

 

主催: 立命館大学・広島平和研究所

開催日時: 1999年12月15~17日

開催場所: 立命館大学 アカデメイア立命21

シンポジウム報告:

「北東アジアの平和の道を探る」――12月に京都で国際シンポジウム開催――

 核兵器やミサイル開発疑惑、食糧危機、経済の悪化などで揺れる朝鮮半島と、それを取り囲む北東アジア地域の平和の道を探る国際シンポジウムが1999年12月15日から3日間、京都・立命館大学で行われ、日本や韓国、中国、アメリカ、ロシア、ヨーロッパなどから約40人の専門家が参加した。参加者らは、朝鮮半島における紛争や大量破壊兵器・ミサイル拡散の防止と安定の維持、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国際社会への参加促進のため、周辺国が協調政策を継続すべきだとの見方に合意した。

 このシンポジウムは、国連信託基金により運営された「朝鮮半島および北東アジアにおける平和の希求に関するシンポジウム」(立命館大学、広島平和研究所共催)。1998年12月に同じテーマで同大学で開催された第1回に続く2回目で、北朝鮮研究で国際的に有名な米カリフォルニア大学バークレー校のロバート・スカラピーノ教授をはじめ、計9カ国から前回とほぼ同じ顔ぶれ30数人が参加した。会議の提唱者である明石康・前広島平和研究所所長が前回に引き続き、議長を務めた。

 会議初日、まずスカラピーノ教授が「朝鮮半島――今後の展望と政策」と題して基調講演を行った。この中で同教授は最近の朝鮮半島について、近年になく好転しつつあると述べた。その背景として、北朝鮮が1998年に経済、法律、科学の分野の専門家100人前後を研修のため諸外国へ派遣し、1999年10月には金正日総書記が韓国・現代グループの創立者と会談するなど、国際社会参加や経済改革の兆しが見られることを指摘し、さらに韓国の金大中政権による対北朝鮮の「太陽政策」や対日関係改善、中国との安全保障対話などにより、北東アジア地域の環境が安定化に向かっているとした。

 その上でスカラピーノ教授は、朝鮮半島情勢のカギを握るのは米朝関係であり、米国は「ペリー報告」で、北朝鮮が建設的な道を歩めば米側も関係改善に努力するとの意思を表明し、北朝鮮もそれに関心を示しているとの見方を示した。最後に北朝鮮をめぐる今後の展望として「北朝鮮体制の早期崩壊」「経済路線をめぐる指導層の分裂」「体制の現状維持」「北朝鮮による南侵」「漸進的な経済改革を通じての体制変革」という5つのシナリオを提示し、国際社会は最後のシナリオの実現を促さねばならないと述べた。

 基調報告に続いて伊豆見元・静岡県立大学教授ら日米ロ3人の参加者が、それぞれの立場から北東アジアや北朝鮮をめぐる情勢報告を行った後、参加者らは2つのグループに分かれ、いかにすれば朝鮮半島情勢の平和と安定を維持しながら、北朝鮮の国際社会参加を実現できるかについて、さまざまな角度から3日間、討議を行った。

 参加者の顔ぶれは、大学や研究機関の研究者、外交官、人道援助などの分野の国際機関関係者、国際ジャーナリストら、いずれも北東アジアや朝鮮半島問題に関する一線の専門家ばかり。会議そのものは、肩書きや公的な立場を離れた自由な議論を行うため非公開とされたが、最終日に2グループの討議とその結論を盛り込んだ、明石康・議長による議長声明が発表された。

 声明は北朝鮮をめぐる情勢について、米国、韓国、日本の対北政策協調や食糧危機の軽減などで改善に向かう一方、北朝鮮経済悪化や、韓国国会議員選挙、米国大統領選による両国国内政治の変動の可能性、北朝鮮による大量破壊兵器開発疑惑などの不安材料が存在するとした。また、各国による政策協調については、①戦争防止、②大量破壊兵器等の拡散防止、③地域の安定の維持④北朝鮮の国際参加による平和的変革、という優先順位を掲げた。さらに声明には、米日韓にロシアや欧州連合(EU)を加えた政策協調や韓国による対北対話路線の支持、米中関係などの2国関係が朝鮮半島情勢に影響を及ぼすことの阻止、1994年の米朝枠組み合意の尊重、地域対話や国際融資機関などへの北朝鮮の参加拡大、国連主導の対北朝鮮人道・技術援助の支持など、参加者によるグループ討議から出された提言が盛り込まれた。

(広島平和研究所助教授 水本 和実)