広島平和研究所

1999年7月2~3日 ワークショップ

朝鮮半島における協力に関するワークショップ

──朝鮮半島の安定に求められる日中米3カ国の連携強化

 

 1999年7月2日、3日、東京において、広島平和研究所、国際研修交流協会、ならびに米国大西洋協議会の共催で「朝鮮半島における協力に関するワークショップ」が開催された。このワークショップの目的は、不安定な状況にある北東アジアの安全保障環境、とりわけ朝鮮半島に関わる諸問題の解決を目指し、地域の安定と平和のために関係各国が協力していくための信頼醸成と環境整備について議論することであった。
 会議には、日本、アメリカ、中国から北東アジア地域や安全保障の専門家、政策担当者約30人が参加した。
 会議ではまず、額賀福志郎衆議院議員(前防衛庁長官)による基調講演が行われた。額賀議員はアジアにおける安全保障構造は冷戦の終焉によっても大きく変化することなく、朝鮮半島の分断はこの地域における「不安」を形成していると分析した。そのうえで北朝鮮のミサイル発射問題や核開発問題に触れ、こうした大量破壊兵器の拡散の懸念、地域の安全保障に与える脅威に対しては適切に対処していかなければならない、と述べた。さらに、北東アジアの平和と安定のためには、信頼醸成とコミュニケーション、アメリカの関与が重要であるとし、それと共に中国の果たす役割への期待を表明した。
 基調講演に引き続き討議に入ったが、その内容は多岐にわたった。主な論点は、日米中トライアングルの関係、北朝鮮のミサイル問題、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の有効性と今後の見通し、「エンゲージメント(関与政策)」アプローチ、北朝鮮を中心とした北東アジアにおける経済協力の多国間枠組の可能性、などであった。そのなかでも参加者の間で最も関心が高かったのが、北朝鮮のミサイル開発問題である。最近2回目のテポドン発射が取り沙汰されているが、これは武器の国際市場へのアピールを狙ったものとも、アメリカなどとの外交交渉のカードとも考えられる。実際にミサイルの発射があるかどうかは意見が分かれた。では実際どのように対処するのか。ミサイル発射を阻止するという短期的な目標も重要であるが、同時により包括的に見て、たとえミサイル発射があった場合でもKEDOプロジェクトは止めないなど、エンゲージメント・アプローチで北朝鮮を孤立させない方が朝鮮半島の安定には寄与するとの考えがアメリカ人参加者から示された。また、こうしたミサイル拡散に対処するためにも日米は戦略ミサイル防衛(TMD)を進めるべきだという意見もあった。中国は、ミサイル拡散は望まないがミサイル実験は主権の問題であり、中国が中止を働きかけることはないと述べた。そしてTMDに関しては、東アジアの軍事バランスを不均衡にするものであり、認められないとの意見が出された。
 KEDOあるいは対北朝鮮協力に関しては次のような議論が出た。KEDOは、エネルギー開発という単一の機能に特化した組織であるためにある程度有効に機能しているので、その特徴を他の分野にも応用し、たとえば「朝鮮半島農業開発機構(KADO)」のようなものを設立することも検討する価値がある。逆に、総合的安全保障という観点から、いろいろな分野の動きを統合して総合的協力の枠組みあるいは会合を創設するというアイディアも出された。また、中国はKEDOに対し、単に支持するだけにとどまらず、資金拠出も含め参加したらどうか、という意見も出た。中国側からは、朝鮮半島という狭い地域に絞らず、北東アジアという地域全体にわたる協力を進めるべきだとの意見がだされ、図們江や黄海地域の開発が例としてあげられた。また、こうした開発協力を進めるうえで日本がより積極的な役割を果たし、たとえば北東アジア開発銀行の設立などを通じて地域協力を推進すべきだという指摘も出された。
 朝鮮半島問題をめぐっては、様々な枠組で対話や議論が重ねられているが、日米中の枠組でというのはその重要性にもかかわらずこれまで意外と少なかった。本会議の特徴は、このユニークな3カ国の枠組であったといえよう。日米中はその役割や利害は異なるものの、朝鮮半島問題の行方に重大な影響を及ぼす。日米中の専門家が集まって率直な意見交換を行い、相互の理解を深め、さらに共通の意識を持つことは朝鮮半島における問題を解決するうえで必要不可欠である。今後は朝鮮半島の安定と平和に向けてより一層日米中が協調する重要性が増してくると思われる。その意味でもこうした対話の努力を継続して行く必要があるのではないだろうか。

(広島平和研究所助手 秋山 信将)


出席者
額賀 福志郎 衆議院議員
伊豆見 元 静岡県立大学教授
金子 奉義 国際研修交流協会常務理事
水本 和実 広島平和研究所助教授
室岡 鉄夫 防衛研究所第一研究部教官
小澤 俊朗 (財)日本国際問題研究所所長代行
高木 誠一郎 防衛研究所第2研究部部長
田中 明彦 東京大学教授
山内 康英 国際大学グローバルコミュニケーションセンター教授
Yang Zhenya,President,Asia-Africa Development & Exchange Society of China
Fu Chengli, Research Fellow, Academy of Military Science of People’s Liberation
Lu Zhongwei, Vice-Director, Modern International Relations Institute of China
Yang Bayun, Professor, Beijing University
Yang Xinbin, Assistant Researcher, Asia-Africa Development Research Institute of Development Research  Center of State Council
Richard Armitage, President, Armitage Associates
Harry Barnes, Director, Program on Conflict Resolution, The Carter Center
Kent Calder, Special Advisor to Ambassador, U.S. Embassy in Japan
James Delaney, Senior Associate, Institute for Defense Analyses
John Merrill, Policy Analyst, Department of State
K.A.Namkung, Director, Korea Roadmap Project, Program on Conflict Resolution, The Atlantic Council of the United States
Robin Sakoda, Armitage Associates
Jason Shaplen, Senior Advisor, Korean Peninsula Energy Development Organization
Leon V.Sigal, Consultant, Social Science Research Council


プログラム

7月2日(金)
基調講演 額賀福志郎衆議院議員
セッション1 「北東アジアにおける安全保障体制の概観」
  司会:リチャード・アーミテージ
  基調報告:楊振亜、田中明彦
セッション2 「米朝の枠組合意(1994年)について」
  司会:ハリー・バーンズ
  基調報告:レオン・シーガル

  司会:ジョン・メリル  基調報告:伊豆見元
7月3日(土)
セッション3 「朝鮮半島における核不拡散の問題」
セッション4 「北東アジアにおける経済協力」
  司会:小澤俊郎
  基調報告:ジョン・メリル
総括セッション
  司会:高木誠一郎
  基調報告:K.A.ナムクン