国際交流・留学 International exchange and study abroad

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派遣留学の体験記 (アメリカ・ハワイ大学マノア校)

国際学部 国際学科4年  村井 惇人さん

 アメリカ・ハワイ大学マノア校
[2018年8月 ‐2019年5月]

● 留学先大学の特徴とアピールポイント
 ハワイは、昔から多くの日系移民を受け入れてきたという歴史もあり、日本文化が深く浸透しており、日本人にとっては身近な観光地として受容されています。特にワイキキ周辺では、日系企業も多く進出しており、日本人が生活するのに適した環境が整っています。そのため、ハワイでの生活は他のどんな海外地域よりも快適となるでしょう。
 一方で、ハワイは日本人や白人だけでなく、フィリピン人や中国人、ベトナム人、韓国人など多様な文化・民族圏から移民を受け入れ、かつ伝統的ハワイ文化を保持することで、アメリカの中でも最も多様な文化を形成しています。ハワイ大学においても、非白人系の学生が過半数を占めており、多文化共生は学内でも実施されています。こうした環境で多文化社会の意義と課題を学ぶことは、昨今の移民問題や人種問題へのアプローチを考えるきっかけになるでしょう。
 また政治という学問分野に関しても、ハワイはとても魅力的な地域です。
 まず、国際関係学や国際政治という分野に関して、ハワイ大学を含めたアメリカの大学は先進的な知識や教養を提供しています。アメリカは世界中の政治・文化対立や経済摩擦の直接の当事者ですので、アメリカの大学は当事者の視点から、政治だけでなく経済や文化、政策科学など多角的な視点から、国際情勢やそれに伴う政策決定を学び、議論する環境を提供することに非常に長けています。
 またハワイには、米軍のインド太平洋軍の司令部があり、アメリカの安全保障戦略に重大な影響力を与えています。ハワイはインド太平洋地域全体に地理的に近いため、太平洋地域全体への司令・軍事的支援・情報収集に長けています。またインド太平洋地域における指揮命令系統では、太平洋軍司令官は大統領、国防長官に次ぐナンバー3にあたり、大統領と国防長官は中東やヨーロッパなど他地域の情勢にも目を向けなければいけないため、インド太平洋情勢を集中的に取り扱う太平洋軍司令部の情報収集や外交・軍事戦略はワシントンDCの政策決定に大きく反映されます。管轄外においても、インド太平洋軍は中東地域での戦争や「テロとの戦い」に多くの戦力を投入してきました。そのため、インド太平洋軍の司令部を擁するハワイは、日本を含めた太平洋地域の同盟国の安全保障やシーレーンの安全に重大な影響力を持っているだけでなく、アメリカの世界戦略の重要拠点の一つなのです。それに伴い、ハワイには国防総省の傘下に置かれている機関も含め、インド太平洋安全保障に関する学術機関や部門が多数置かれており、日本を含めたインド太平洋地域の安全保障を学習・議論には最適な場所となっています。
 加えて、ハワイは独自の政治問題を抱えています。観光都市化に伴い、物価と賃金の格差が大きくなったことで、ハワイでは貧困の拡大やホームレスの増加が問題となっており、その対策も大学内で活発に議論されています。また、ハワイの火山でのテレスコープ開発を巡る先住民の権利との対立など、先住民問題も大学内外で広く議論されています。こうしたホームレス問題や先住民問題などハワイ特有の政治問題の学習や議論を通じて、社会問題や政治経済全体への理解を深めることができます。
 このように、文化や歴史、政治、経済など広範な分野に興味を持つ方にとって、ハワイへの留学は非常に有意義になると思い ます。


 <大学校舎の様子>


<友人たちと 左:ハワイ島、右:カウアイ島のワイメアキャニオン>

● 留学を振り返って、留学で得たものと今後の目標は何ですか?
 留学で学んだことや得たものはたくさんありますが、その中で最も貴重だと感じたのは、国際情勢や社会情勢、歴史の現場を実際に体験する機会だと考えます。例えば、ハワイは観光地として有名ですが、低賃金と高物価の格差が原因で貧困やホームレスなどの問題を抱えていることは、日本に住んでいると想像できません。また、多文化社会ハワイでは人種を巡る議論が盛んで、大学内外で人種問題の深刻性やそれに対する議論の活発さを直接肌で感じることができました。加えて、太平洋戦争勃発の地であるハワイで、どのような経緯で真珠湾攻撃が行われたか、ハワイが戦時中どのように貢献してきたか、日系人がどのような苦痛を経験してきたか、アメリカが太平洋戦争をどう評価しているかという、今までなじみのなかった歴史の側面にも初めて触れることができました。こうした経験は、ただ教科書や講義で学習するだけでは得ることは難しいです。この留学を通じて、現場に実際に触れることで初めて学ぶことのできることがあるのだと知りました。
 今後の目標に関してですが、私は将来国際政治や安全保障に携わりたいと考えています。著しい国際情勢の変化の中で、経済や安全保障といった利益をどのように維持・拡大するかは喫緊の課題で、この問題を考察することはとても意義深いことです。こうした仕事を目指す中で、そしてこうした仕事に従事する中で、ハワイで学んだこと・経験したことを十分に生かせたらと考えています。


<授業の様子>


<ランチ 種類はアメリカン料理、中華料理、ネパール料理、日本食など多岐にわたる>

● これから留学を希望する後輩へのメッセージ
 今留学を考えている人は、まず第一に留学の動機を考え、そしてそれが本当に自分の将来の目標に一貫しているか、費用対効果の点で理にかなっているか考えてみてください。そもそもなぜ自分は留学をしたいか、留学が自分の将来にどのような利益をもたらすかを考えることは、留学に意味を持たせる上で非常に重要です。私の場合、国際政治を学ぶ上で、先進的な国際関係学や、政治、経済、文化など多様な分野を網羅する必要があると考え、ハワイ留学を志望しました。ですが人の生き方はそれぞれ違うので、ひょっとしたら自分が目指しているものは必ずしも留学を伴う必要がないかもしれません。留学は多くの時間とお金を要します。もし留学で得たものがこうした機会費用に見合うものではなかった場合、多くのお金と時間を無駄にしてしまいます。それでも、もし自分の将来にとって留学が必要であると確信を持てるなら、迷わず留学にチャレンジしてみてください。
 また、留学のモチベーションを維持する上で、留学の目標を設定することも重要です。明確な目標を打ち立てることで、留学中に何を取り組むべきか明確になります。その一つとして、私は「コンフォートゾーン」からの脱却を目標に据えました。「コンフォートゾーン」とは、自分にとって居心地の良い、不安感のない環境を指します。心理学上、不安感の存在しない「コンフォートゾーン」から適度の不安感や緊張感が存在する「ラーニングゾーン」へ移行することで、トライアンドエラーを通じパフォーマンスの向上につながるといわれています。同様に、日系企業や日本人の多い、日本人にとって暮らしやすいハワイの環境に甘えるのではなく、サークル活動やボランティアなどを通じ現地の学生や日本以外からの留学生とも交流を深めることで、英語力の向上だけでなく、異なる価値観や文化へのさらなる理解につながりました。留学は自らの固定観念や価値観を大きく変えるチャンスでもあります。今いる環境の外に積極的に出ることで、従来の環境と外の環境について新たな発見があります。そこから、自分の生き方をどう変えていくべきか、既存の環境をどう改善するべきかが見えてくると思います。皆さんも、実際に留学するかどうかにかかわらず、快適な環境から外に踏み出して積極的に行動してみてください。きっと成長につながるはずです。留学はそのための選択肢の一つです。


<国際交流サークルISAのInternational Nightにて>


<パールハーバーにて 右:ミズーリー号>

● 最後に
 昨今の日本の国際競争力の低下の原因の一つとして、大学と学生の国際性の低下が挙げられています。学生が留学に目的を積極的に見いだせないことで、海外留学経験のある学生の割合が比較的低くなり、結果として先進的な学術水準やイノベーションに追いつけない状態が続いています。かつての日本では海外と関わらなくても生活できたかもしれませんが、グローバライゼーションが進み、世界規模で経済活動の効率化が進む今日においては、内需のみに依存する閉鎖社会では現在の生活レベルを維持・発展させることはできません。そのため、一人一人がそれぞれの目的意識をもって留学に臨み、国際社会で競争力を培うことで、様々な分野での日本のさらなる発展、何より個々人の幸福につながると考えます。ですから皆さんも、留学という選択肢をよく検討してみてください。 


<左:ワイキキビーチ、右:海側から見たワイキキビーチ>

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