広島平和研究所

連続市民講座(2019年度)

 

アジアの平和とガヴァナンス

 広島平和研究所では、2019年10月4日から11月1日まで合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ)において、2019年度の連続市民講座を開催しました。

                             


■講座名 アジアの平和とガヴァナンス

【概要】
  冷戦終結後、グローバリゼーションが進展する一方で、今日、猛暑、集中豪雨、地球温暖化といった地球環境問題をはじめ、核戦争の危機、国際テロ、貧困など国際安全保障環境に対する脅威も深刻化しています。また、ソ連と旧ユーゴスラヴィアの分裂を機に欧州およびアフリカ各地で民族や宗教の相違などに基づく内戦が勃発し、難民・避難民の数も急増しています。
 他方で、冷戦の終結後のアジアでは軍事的緊張が続いています。インド、パキスタン、北朝鮮が核開発を行い核戦争の脅威は深刻化し、中国の軍事大国化とそれがもたらす南シナ海の海洋安全保障問題、北朝鮮の核開発による軍事的緊張などを前にして、アジアにおける軍事ガヴァナンスの構築は喫緊の課題となっています。
 以上のような事態を踏まえて、今日のグローバル・ガヴァナンスの構築を阻む要因は何であるのか、アジア域内にガヴァナンスの制度構築は可能であるのか、などの問題意識を念頭において、アジアの平和とガヴァナンスについて考えてみたいと思います。

■日時 10月4日、11日、18日、25日、11月1日 金曜日 全5回  18:00-19:30(講義60分、質疑応答30分)

■会場 広島市まちづくり市民交流プラザ (合人社ウェンディひと・まちプラザ)
               北棟6階 マルチメディアスタジオ
               広島市中区袋町6番36号 

■定員 100名 


講義内容等

10/4 (金) 『グローバル・ガヴァナンス論の現状と課題』 大芝 亮(広島市立大学広島平和研究所所長・特任教授)
どうすれば戦争の勃発を防ぎ、平和な国際社会を築くことができるのでしょうか。国際政治学では、この問いについて考えるために、まず国際関係の特徴を分析し、次に戦争を防ぐための条件等を議論してきました。古典的現実主義をはじめとする主な考え方を紹介した上で、現在、注目されているグローバル・ガヴァナンス論を検討します。また、現在このような考え方に対して、トランプ政権の外交政策等により、いかなる挑戦がなされているのかを議論し、平和な国際社会を築くための方法を考えます。

10/11(金)『地球環境問題とグローバル・ガヴァナンス』 沖村 理史(広島市立大学広島平和研究所教授)
 21世紀の国際問題の一つに、気候変動問題を筆頭とした地球環境問題があげられます。気候変動問題はある国だけが対処しても解決できないため、国際社会は、国連気候変動枠組条約やパリ協定などの国際制度を形成して対応を進めていますが、トランプ政権のパリ協定離脱など、グローバル・ガヴァナンスを妨げる行動も見られます。本講義では、揺らぐ国際制度の現状と国際制度を支える政府、企業、社会の取り組みを検討します。

10/18(金)『安全保障共同体論の現状と課題』  吉川 元(広島市立大学広島平和研究所特任教授)
欧州連合(EU)はイギリスの離脱問題で揺れています。欧州安全保障協力機構(OSCE)もウクライナ問題でロシアと西欧諸国間の対立が深刻化しています。一方、軍事化が進むアジアではアメリカの「核の傘」の下で日米同盟が強化され、安全保障共同体創造の兆しはありません。安全保障体制が後退しつつある欧州と平和・安全保障の制度化が進まないアジアの現状を検討しつつ、地球全体(グローバル)の平和・安全保障の行方を論じます。

10/25(金)『東アジアの軍事・核ガヴァナンスの障害』  孫 賢鎮 (広島市立大学広島平和研究所准教授)
東アジア地域は北朝鮮の核・ミサイル開発が進む一方で、経済成長を背景とする中国の政治的・軍事的プレゼンスも高まっています。また、朝鮮戦争以来、韓国と北朝鮮はいまだに休戦状態にあり、安全保障をめぐる緊張も続いていますが、北朝鮮の非核化を協議する南北間、米朝間の首脳会談が行われ、解決に向かっています。本講義では、東アジアの安全保障と北朝鮮の非核化プロセスにおける各国の役割について検討します。

11/1(金)『国際連合による集団安全保障制度の理論と実際――アジアの事例を主な素材として』 佐藤 哲夫(広島市立大学広島平和研究所教授)
 国際社会における平和と安全の維持のために、国際連合は集団安全保障制度を導入しています。同盟政策に基づく個別的な安全保障方式と対比して、武力行使を禁止した上で、違反する侵略国に対して、国際社会全体として対抗する仕組みです。常任理事国の拒否権のために限界もありますが、冷戦解消後においては、様々な事例に適用され注目されてきています。アジアの事例も取り上げながら、その可能性や課題を検討します。


講師紹介

大芝 亮 / 広島市立大学広島平和研究所長・特任教授                                             
兵庫県出身。1954年生まれ。一橋大学法学部卒業、一橋大学大学院法学研究科修士、米国イェール大学大学院Ph.D.(政治学)取得。上智大学法学部助教授、一橋大学法学部教授・副学長、青山学院大学国際政治経済学部教授を経て、2019年4月より現職。日本国際政治学会理事長(2004-2006年)。専門分野は国際関係論。単著に『国際組織の政治経済学』(有斐閣、1994年)、『国際政治理論』(ミネルヴァ書房、2016年)、編著に『日本の外交(第5巻)対外政策 課題編』(岩波書店、2013年)、共編著に『パワーから読み解くグローバル・ガバナンス論』(有斐閣、2018年)などがある。

沖村 理史 / 広島市立大学広島平和研究所教授                                          
東京都出身。東京大学教養学部卒業、メリーランド大学大学院政治学研究科修了(M.A.)、一橋大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。2007年一橋大学大学院より博士(法学)の学位を取得。島根県立大学総合政策学部教授を経て、2019年4月より現職。専門分野は国際関係論、国際制度研究。著書(共著)に、『国際政治学入門』(ミネルヴァ書房、2008年)、『ギガトン・ギャップ――気候変動と国際交渉』(オルタナ、2015年)、『アジアの環境法政策と日本』(商事法務、2015年)などがある。

吉川 元 / 広島市立大学広島平和研究所特任教授                                          
広島市出身。1951年生まれ。上智大学外国語学部卒業、一橋大学博士後期課程単位取得退学。博士(法学)。広島修道大学法学部教授、神戸大学大学院法学研究科教授、上智大学外国語学部教授を経て、2013年、広島平和研究所長に着任し、2019年4月より現職。この間、カナダ・トロント大学、ロンドン大学(LSE)客員研究員。専門分野は国際関係論、平和学。単著に『国際平和とは何か――人間の安全を脅かす平和秩序の逆説』(中央公論新社、2015年)、編著に『グローバル・ガヴァナンス論』(法律文化社、2014年)などがある。

孫 賢鎮 / 広島市立大学広島平和研究所准教授                                       
韓国釜山市出身。1971年生まれ。2006年神戸大学大学院法学研究科修了。博士(公共関係法)。2006年〜2011年、韓国統一部事務官(北朝鮮人権、拉致問題担当)、2011年〜2014年、韓国法制研究院研究員を経て2014年4月より現職。専門は国際法、北朝鮮問題。主な研究業績に、「北朝鮮の体制転換による北朝鮮住民の人権改善方案の研究――北朝鮮の政治犯収容所の清算問題を中心に」『統一研究院学術業書(Ⅱ)』(統一研究院、2013年)、「北朝鮮の脱北者の法的地位――国際法の観点から」『広島平和研究』Vol.4、(2017年3月)などがある。

佐藤 哲夫 / 広島市立大学広島平和研究所教授   
静岡県浜松市出身。1955年生まれ。一橋大学法学部卒業、フルブライト奨学生としてアメリカ・フレッチャー法律外交大学院にて法律外交修士の学位を取得。1994年に博士(法学、一橋大学)の学位を取得。1984年以降、一橋大学法学部助手、専任講師、助教授、教授、同大学院法学研究科教授を経て、2018年4月より現職。専門分野は国際法、国際組織法。著書(単著)にEvolving Constitutions of International Organizations(The Hague, Kluwer Law International, 1996)、『国際組織法』(有斐閣、2005年)、『国連安全保障理事会と憲章第7章 集団安全保障制度の創造的展開とその課題』(有斐閣、2015年)などがある。